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政府発表の無意味な年率換算より実体経済を信じなければ未来に成長できない

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内閣府が5月20日に発表した1〜3月期の国際総生産(GDP)が対前期比で-4.0%になった。2008年の10〜12月期は-3.8%だったから、この6カ月間は大きく凹んだことになる。しかし、問題は政府発表の年率換算で-15.2%という数字だ。このまま凹むのが続くと仮定すると2009年は-15.2%にもなると単純に算出された数字である。小学生にもできる計算だ。しかし、この数字に何の意味があるのか。

実質GDP成長率の推移


この四半期が大きく凹んだことは事実だが、次の前期比ではプラスになることがかなり見えてきているのに、なぜこのような年率換算という馬鹿げた無意味な数字を発表するのだろうか。むしろ、対前年同期比がどうなったのかを知りたいのに、5月20日の日本経済新聞夕刊を見ても全く書かれていない。内閣府のホームページを見ると発表資料がpdfファイルで見ることができるが、やはり書かれていない。そもそも絶対値の数字が発表されていないため加工のしようがないのである。

日経新聞でも年率で-15.2%とデカデカと1面トップで書いてある。与謝野財務大臣のコメントを聞いても暗い見方をしている。悲観的に述べる方が知的でもあるかのように振る舞う評論家やコメンテータがいるが、これからの経済情勢を考えると全くもって無責任極まりない。現実として在庫調整が終わり、マスコミは採り上げないがフル生産しているところも一部には出てきている。上昇機運がはっきりしている今、必要以上に暗く対応することは次の成長に乗り遅れるということにつながる。

次の成長期に世界中が成長しているのに日本だけがくら〜いまま沈んでいたら、いったい誰が責任をとるのか。責任をとれない人たちが暗い暗いと言い続けているのにすぎない。ビジネスを行っている企業は、いつが立ち上がりなのか必死になって探しており、うまくそれに乗るべき時期なのか必死に模索しているのに、ノー天気に暗いことを言い続けるのは市場経済ビジネス企業に対する背任行為にも等しい。

政府がその片棒を担ぐのはもちろんまずい。ノー天気な年率換算ではなく、前期比、絶対値、前年同期比、さらには月別推移などのデータからモノをいうべきであろう。きちんとした分析をせずにこのままノー天気に外挿するとこうなるという数字は将来を見誤ってしまうのである。

しかも今回の数字の内訳を並べてみると、個人消費-1.1%、住宅-5.4%、設備投資-10.4%、公共投資0%、政府消費+0.3%、輸出-26%、輸入-15%とある。GDPの2/3を占める消費がほとんど落ちていないことをもっと注目すべきだ。輸出は円高の影響が出てマイナス幅が大きく、円ドルレートが10〜15%落ちたことを考慮すると輸出は-10〜15%程度だとみてよい。

GDPの大きな部分を占める消費の落ち込みが少なかったからこそ、全体として-4%で済んだのである。消費の割には設備投資のマイナス指向は大きすぎる。住宅や自動車のように消費財でも価格の大きな商品の回復はまだ時間がかかるものの、個人が自由に購入できるほどの価格帯の商品はもう回復の気配が見えている。つまり消費者向けの数万円以内の商品の回復に備えなければ沈んだままになってしまう。今はビジネスチャンスが広がってきていることに対応すべき時期だともいえる。「種の起源」を著したチャールズ・ダーウィンの言葉を思い出そう。
「生き残るものは強い者ではない。賢い者でもない。時代の変化に対応できる者だ」

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