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ZigBeeで沸くワイヤレスジャパン2007

 ZigBeeネットワークの開発がしやすくなってきた。チップを手掛ける企業がフリースケール以外にも増えてきただけではなく、開発を容易にするツールやキットが手に入りやすくなってきたためだ。

 7月18日、東京ビッグサイトで開幕したワイヤレスジャパン2007では、ベンダー6社によるZigBee相互接続が行われ、ルネサス テクノロジや沖電気工業、フリースケール・セミコンダクター、英Jennic社、テキサスインスツルメンツ社、NECエンジニアリングがそれぞれのZigBeeネットワークデバイスを無線でつなぎ、その通信接続状態をパソコンで見ることができるようにした。

この中で、あるデバイスのスイッチをわざと切ることでネットワークの接続が変わる様子を示した。ネットワークデバイスに障害があってもそれを回避しながら、接続できることを示した。接続状態を見るためのアナライザには、DaintreeNetworks社の装置を使っている。

ZigBee Allianceの相互運用実験デモ ZigBee Allianceの相互運用実験デモ

6社の通信機を並べ、その接続状態をコーディネータ機を通してパソコンにつなぎモニターしている。6社の通信機器がすべてつながっており、かつ接続経路を自動的に探索する。


Wireless Japan2007 開催の初日の割に人通りはまずまず
Wireless Japan2007 開催の初日の割に人通りはまずまず


チップメーカーや開発ツールメーカーが充実してきたため、今回のワイヤレスジャパンではZigBeeがようやく立ち上がってきたことがうかがえる。ルネサスのチップを使い、ZigBee準拠の通信ユニットでZigBee2006仕様のロゴ認証を取得した、アドソル日進は、ZigBeeスタータキットを発売した。これを使えばプログラミングすることなく、無線通信装置の設定やZigBeeネットワークを構築できる。

沖電気は、ZigBeeネットワークの全体をパソコンなどでチェックするコーディネータ装置と、ルータ、端末の通信装置というZigBeeネットワーク全体を構成するための開発きっとWiselink-KitZ01の予約受付を始めた。同社は、ZigBeeと同様の低消費電力近距離ネットワークであるIEEE802.15.4に準拠したチップを開発、上田新日本無線に出荷している。上田新日本無線は、沖電気のチップで無線モジュールを参考出品した。MAC層とPHY層、RF部分のハードはZigBeeとほぼ共通に使える。ZigBeeと比べて802.15.4はセキュリティ層がなく、メッシュ構成に対応できない。

NECエンジニアリングは、ZigBeeおよび802.15.4ネットワーク向けの無線モジュールと開発評価キットをこの7月から発売した。同社は、スター構成で十分だが、1:nのnをBluetoothの7台よりももっと増やしたいという要求には独自プロトコルのシリアル通信モジュールを、メッシュ構成を望むユーザーにはZigBee準拠通信モジュールをそれぞれ提供する。ZigBeeは接続ノード数に気にすることなく、使えるというメリットがある。

Jennic社は802.15.4とZigBeeの専業マイコンメーカー。ZigBeeと802.15.4に準拠するマイコンJN513xを出荷している。このマイコンは、送信出力を6dBステップで変え、飛ばす距離を変えられるため、消費電力も変えられる。送信できるデータレートは250kbpsとそれほど高くはないが、音声を送ることができ、たとえば騒音の大きな場所でガイドの説明を聞くような工場見学などに利用すると、説明者の声を全員が聞くことができる。年末にはデータレートが1Mbpsの514xシリーズを出す予定だ。

Jennic社と同様、ZigBee専用のチップメーカーの米Ember社は、ZigBeeおよび802.15.4に準拠したチップEM250を出しているが、ZigBeeプロトコルを集積しない送受信ネットワークチップEM260も売り出した。ZigBeeプロトコルを、ほかのマイコンに受け持たせれば、軽いチップになる。同社は、両チップの開発キットも売り出した。

1年以上前に、低消費電力ネットワークチップの欧州ベンチャー、Chipcon社を買収したTexas Instruments社は、メッシュ型にはZigBee準拠、スター構成やp2p構成には802.15.4準拠のチップをそろえているが、開発キットもそろえている。

ZigBee送信機に接続するセンサー基板を提供するメーカーもある。OS technologyは温度湿度センサー、バイメタルセンサー、加速度センサーなどの小さな基板を製造しているが、インターネットと接続するゲートウエア装置も売り出した。また、フィリピンのEMS企業であるIMIジャパンもZigBeeゲートウエイを設計、このほど売り出した。これらのゲートウエイを利用することで、ZigBeeネットワークにつながっているデバイスやセンサーの様子を外部のパソコンでモニターできる。

一方、ZigBeeではなく独自のプロトコルを利用したワーヤレスセンサーネットワークを提供する企業も出展している。Crossbow社は、ZigBeeの相互運用性試験やネットワークデバイスの動きを待てず独自のネットワークを構成するが、ZigBeeが立ち上がると劣勢を免れない。

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