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マイクロソフトがカーインフォテインメント向け基本ソフトWA、MAを統合へ

米マイクロソフト社は、カーナビゲーションあるいはカーコンピュータ向けのソフトウエアプラットフォームであるWindows Automotive(WA)とMicrosoft Auto(MA)を来年中に統合することを明らかにした。自動車用とはいってもパワートレインや車体関係ではなく、カーナビに組み込むインフォテインメント関係のコンピュータプラットフォームを動かすためのソフトである。これによりカーインフォテインメントの市場制覇を狙う。

Windows Automotiveは主に日本のカーナビメーカー向けに開発されたOS(オペレーティングシステム)を含めたプラットフォームであり、OSに加え車載用ユーザーインターフェース開発ツールや信頼性解析ツール、グラフィックスモデルなども搭載している。2008年6月に最新版version5.5を発表している。Microsoft AutoはイタリアのFiat社と米Ford社向けに専用に開発されたプラットフォームで、やはりOSに加えiPodなどの音楽プレーヤーを接続できるメディア接続機能、Bluetoothのハンズフリー機能、音声認識・音声操作、デバイスマネージャーを搭載したもの。

この二つのプラットフォームを統合したコード名Motegiプラットフォームには、基本OSのWindows Embedded CE 7.0に加え、HMI(ヒューマンマシンインターフェース)開発キットや、高速起動とエラー復帰の最適化を行うReady Guard機能などが加わる。同じプロセッサコアを並列動作させるSMP(Symmetric Multi-Processing)のサポートやIE7に相当するブラウザなどはOS上に載る。


Motegi Platform Plan


HMI開発キットは、Windows Automotive 5.5に搭載されているAUIF(Automotive User Interface)をベースとしているが、AUIF自体は製品化しない。このAUIFをマイクロソフト本社が開発しているユーザーインターフェース、Silverlightに統合していく予定だ。このAUIFには豊富なグラフィカルユーザーインターフェースが搭載されており、カーナビのメニュー画面やサブメニュー画面、地図などをグラフィカルに表示できる。


Automotive User Interface


また、欧米のクルマに搭載され始めたMicrosoft Auto 3.0には、Bluetooth 2.0 + EDR仕様のソフトウエアスタックを含み、Bluetooth搭載電話をハンズフリーで話ができる機能を持つ。ただし、英CSR社などのBluetoothチップの多くがソフトウエアスタックも含んでいるため、このチップを使う場合にはマイクロソフトのこのソフトウエアスタックは使わなくて済む。しかし、ソフトウエアスタックを搭載していないBluetoothチップだともっと安価になる可能性があるという。また、このMicrosoft Autoに使える携帯電話はGSM対応機に限られるが、日本向け仕様にはNTTドコモやソフトバンク、Au方式に対応できるようにする予定だとしている。

Microsoft Autoのリファレンスデザインキットは米フリースケールセミコンダクター社のi.MX31プロセッサを用いて共同開発した。


米フリースケールセミコンダクター社のi.MX31プロセッサ


Motegiに搭載されるReady Guard機能には、起動を高速化するための機能として、疑似的な小さなOSを設け、まずこのOSを立ち上げ(初期のロードプログラムが700KB程度だと数十msで起動)、その後メインのOSを立ち上げる。擬似OSからメインOSへの切り替えは1ms以下。エラー復帰機能ではいくつかのエラー検出センサーを使ってエラーを検出した後、エラーステータスを解析し、メインOSをリブートするか、システムをリセットするか、プロセスをリセットするか、といった判断を行い、信頼性のレベルが異なるソフトウエアが共存するシステムのなかで、エラーに応じて復帰方法を変え、それぞれのソフトに対処する。

新しいプラットフォームMotegiのリリース時期は米国では2009年9月だが、日本国内向けの時期は明らかにしていない。


(2008/11/28 セミコンポータル編集室)

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