セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

アナデジとRF回路を設計できるPCBツールをAgilent/Mentorチームが開発

|

携帯電話やWiFi、カーナビ、RFIDなどワイヤレスの機器や部品が、通信だけの分野からコンピュータやカーエレクトロニクス、民生などありとあらゆる分野に取り込まれるようになってきた。高周波(RF)回路とアナログやデジタル回路を搭載したプリント板設計はますます多品種になってくる。全ての回路を統合したEDAツールがあればPCB設計期間は半減する。こんな設計ツールをMentor Graphics社とAgilent Technologies社が共同で開発した。

PCB設計ツールの市場シェアトップのMentorと、RF設計やシミュレーションが得意なAgilentとが共同のドリームチームで取り組んだ。アナログ回路とデジタル回路の設計と、RF設計とは全く違う。アナログ・デジタル混載回路では配線は単なる抵抗とみなし、配線がコーナーで曲がったり途切れたりしてもオームの法則だけで処理できた。RF設計は、マクスウェルの電磁界方程式を解いて、波の反射や屈折などを考慮に入れる必要があり、入出力は50Ωのインピーダンス整合をしっかりとって反射を防ぐ、といった設計が必要である。このため配線の太さやコーナー部分の形状などは電磁波の反射に大きく影響する。


Mentor's RF/A/D Schematic & Layout


1枚のPCBにRF、アナログ、デジタルの三つの全く違う回路を設計する場合には、RF側とアナデジ側とで何度もやり取りしなければならなかった。このため開発に時間がかかった。従来は別のプリント回路基板にRF回路を形成していた。しかし、開発期間の短縮や小型薄型化を追及するような、携帯電話やモバイル機器などの小型機器では1枚のプリント版に全回路を作り込まざるをえない。

今回のドリームチームが作ったツールを使えばディスプレイ画面を見ながらボタン1個で
アナログもRFもシミュレーションできる。しかもボードの小型化を一段と進めることができる。従来のRF基板とアナデジ基板だと、別々に設計するだけではなく、それらを何度もやり取りし最適な回路に作りこまなければならなかった。今回のツールは、MentorのExpedition EnterpriseあるいはBoard Station XEフローとAgilentのAdvanced Design System (ADS) EDAソフトウエアを密に統合させたものである。


回路設計した後のシミュレーション


回路設計した後のシミュレーションではオシロスコープのようなタイムドメインでの波形も、スペクトルアナライザのような周波数ドメインでの波形も見ることができ、アイパターンもシミュレーションできる。もちろん、sパラメータで入出力の反射、透過を知ることができる。

例えば、LSIのパッケージをQFPとBGAとでは反射や波としての性質が大きく違っており、実際にはんだ付けしなくてもパッケージ仕様を入力するだけで、最適なLSIパッケージを見つけることができる。また、最近のPCB基板では12層配線が一般的であり、基板内部に受動部品を埋め込む基板も普及している。低温焼成法LTCCで作るような基板も対象となる。そのような多層配線でもマイクロストリップライン近似でシミュレーションできると、AgilentのEEsof EDA製品マーケティングマネジャーのHow-Siang Yap氏はいう。

実験では、60〜70GHz程度のPCB設計まで手掛けている。電磁波の波長が回路基板の配線の長さや幅などと同じ程度になっているため、実験とシミュレーションとはきわめてよく合うと、同社顧客ビジネスリードのHee-Soo Lee氏はいう。EMIシミュレータは同じように電磁界シミュレーションを作っても実験値と合わないことが多いが、このシミュレータはランダムなEMI放射シミュレータとは全く違うと同氏は述べる。

MentorとAgilentは1991年から両者のインターフェースに関してコラボレーションしていたが、インターフェースでの共同作業ではお互いに推定することが多く、実際の中身まで立ち入って知ることができなかった。そこで、2年ほど前からインターフェースレベルではなく、中身まで踏み込むようなコラボレーションを始めた。今回、ツールを完全に統合できたのは、お互いに中身まで2社の間で公開していたからだ。

RF設計ソリューションはMentorのExpedition Enterprise、あるいはBoard Station XEフローにオプションとして価格設定してあり9,000ドルから。またAgilentのAdvanced Design System単独でも9,000ドルから入手できる。

月別アーカイブ