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海外の設計部門強化、ハード/ソフトの協調設計などで効率化を図るルネサス

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ルネサス テクノロジは現在の厳しい半導体市況のなかで、設計効率を上げてコスト低減を図るとともに、付加価値向上によるチップ単価の上昇を狙う同社の半導体開発戦略について明らかにした。

「半導体市場は出荷額、数量ともに右肩上がりの成長を続けているが、平均単価は1995年をピークに低下している。今後も市場の成長率は10%に達しないが、それに近い成長を続けるとルネサスは見ている。それは微細化をベースにした成長ではなく、設計で機能を実現することが成長エンジンとなり、さらに設計の重要さが増す」とルネサスの製品技術本部長兼北伊丹事業所長の取締役中谷雅夫氏は語る。

テクノロジー・ノードが微細化されるたびに設計費用は2.5倍に上昇するという(IBS社)。ルネサスは一例として、90nmプロセスで1.8億トランジスタのSoCを設計する場合をあげ、40億円の総開発費の内、ツールやハードウエアなどに15%、残りの85%が人的リソースにかかり、さらに、その中でシステムレベル設計と論理設計の段階で検証を含めそれぞれ51%および27%のコストがかかっていることを明らかにした。


ルネサスの調査では人件費が設計費用の85%を占める

ルネサスの調査では人件費が設計費用の85%を占める


ルネサスでは高付加価値のIP群、設計プラットフォーム、そしてEDAの活用を同社のR&D戦略の3本柱として、安く、早く、楽な開発を実現するとしている。

「ざっくり言って、設計コストを2―3割削減し、また設計プラットフォームの活用によって開発期間半減を目指す」と中谷事業部長。

高付加価値化については、自社の持つIPを活用して、アプリケーションの要求に柔軟に対応できる複数のCPUと複数のOSを使用するヘテロジニアスで、かつ非対称のマルチコアのアプローチを取る。

設計の効率化を目指してEXREAL(エクスリアル)プラットフォームを2005年10月に提唱した。「携帯用のLSIや画像処理のSoCなどにこのプラットフォームの成果がでている」と中谷氏は語る。

携帯用のLSIについていえば、画像処理、ミドルウエアを差し替えることにより上位モデル、中位モデル、下位モデルが短期間に開発できる例を示した。


EXREAL上での上位・中位・下位モデル展開

EXREAL上での上位・中位・下位モデル展開

さらにそのEXREALプラットフォームのコンセプトをマイコンへも展開したのが今年5月に発表されたRXコア・マイコン・プラットフォーム。ルネサスは現在日立から受け継いだ2シリーズと三菱から受け継いだ2シリーズの4つのマイコンのファミリーを持つが、「ゆくゆくはRXに収束させる」と中谷氏。RXは2009年にサンプル出荷の予定。

「仕様からRTLに落とすところまでが最も人手がかかっている」という部分をすべてC言語で設計できるように、動作を記述したハードウエアモデル(バーチャル・プラットフォーム)を作り、ハードウエア設計を進めながらソフトウエアの開発を始める。従来、ハードウエアを試作した後ソフトを開発し始めていたことと比較すると3〜4カ月早く開発できる。またかねてからいわれていたが、なかなか実用化しなかったハイレベル合成を実用化した。このツールについては外部と共同開発しているというが、社名は明かさなかった。
    
同社の設計体制を支えるのは国内約4000人と現在約1000人の海外設計技術者。ルネサスは2011年にはこの海外勢を2倍の2000人に拡大する予定。マイコン設計の中国は今の350人から500人へ、SoCの開発のベトナムは250人から500人へ増員を予定する。ベトナムへの設計会社としての進出はルネサスが最初と標榜しているが、最近、ルネサス・デザイン・ベトナムの現地のエンジニアがベトナムからは始めての論文をA-SSCCにおいて発表すると報告している。

ルネサスの海外設計拡大計画

ルネサスの海外設計拡大計画


(2008/10/23 セミコンポータル編集室)

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