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PFCを内蔵、効率90%の照明用安定化ICをインフィニオンが開発

ドイツのインフィニオンテクノロジーズ社は、力率改善回路(PFC)を内蔵して効率を90%にまで上げ、蛍光灯の明るさ調整すなわち調光も可能な照明器具向け安定化回路を開発、このほどエレクトロニカ2008でICと開発モジュールも含めて展示した。欧州ではこれまで主流だった白熱灯から地球環境への配慮で蛍光灯へと変わりつつある。ただし、蛍光灯先進国の日本に追いつくのではなく、それよりももっと低消費電力、かつ高機能なICチップを設計した。

このICB2FL01Gは次世代の蛍光灯安定化制御回路と位置づけ、欧州だけではなく日本にも売り込みを図ったもの。従来の蛍光灯でも電子制御方式の安定器やその発展のおかげで消費電力は4億MWhから最近では半減してきた。同じ明るさでも従来なら直径26mmの細長いタイプの蛍光灯ランプから直径16mmのランプへと小型・低消費電力化へ向かってきた。これでもまだ不十分で、明るさを変えられる調光機能の付いたランプなら1/5に減らせるとインフィニオンは見積もっている。すなわち8000万MWhにまで減らせるという。CO2排出に換算すると初期の2億トンから4000万トンにまで減ることになる。

LED照明は効率が高く消費電力は小さいがランプの単価が2万円もするため、普及にはまだ時間がかかる。このICを使えば最近の蛍光灯でさえ、消費電力をさらに下げることができる。最新の蛍光灯ランプとの比較はなされていないが、調光機能を日光と連動させて制御すれば低消費電力化の期待は大きい。


PFCを内蔵、効率90%の照明用安定化IC


このICは交流90~270Vの入力に対して、蛍光灯をドライブする数100Vの電圧を発生し安定化(バラスト)回路により放電を維持させる働きを持つだけではない。力率改善回路(PFC:power factor correction)や高耐圧のハーフブリッジドライバ回路を1パッケージに収容している。PFC回路はデジタル的にフィードバック回路を制御する”デジタル電源”を構成しており、いろいろな負荷に対してもPFCをダイナミックに変えることができ、効率は90%にも及ぶとしている。


Infineon ICB2FL01G


集積しているSiチップはミクストシグナルを含む2チップ構成になっている。入力側の最大270V入力まで可能にする低電圧側と、500~600Vの電圧を発生する高電圧側のチップをそれぞれ分け、その二つをコアレストランスで結合している。これはチップ上にコイルを作り、直流的には1次側と2次側を分離している絶縁耐圧は最大10kVと高い。インフィニオン社独自に開発したこのコアレストランス技術は直流的に絶縁耐圧が高いだけではなく、正負の過渡電圧に対しても強いという。

2チップ構成のミクストシグナルICは、さらに蛍光灯向けの独自のテストモードも組み込んでいるため、照明メーカーやバラストメーカーがこのICを使うことでランプの寿命検出やプレヒート動作モード試験の時間を短縮できる。応用にもよるが、コンデンサや抵抗、ダイオードなど部品点数は20個以上も削減できる場合があるという。タイミングや周波数などパラメータの変更は外部抵抗だけで調整できるため、従来コンデンサをベースにして調整していたときのようなトリミングやエイジングといった問題がないとしている。またプレヒート時間も0ms〜2500msの範囲で変えられる。

ランプに対する過負荷の状態を調整できる上、サージとランプ寿命とも区別できるため、温度上昇の検出やフィラメントの保護、容量性負荷の検出などを駆使することで、従来よりもランプ寿命を延ばせるとしている。最大4本の蛍光灯を1個のICで制御できる。

蛍光灯だけではなく、HID(high-density discharge)ランプや今後のLEDランプにも適用でき、照明器具の低消費電力化、その開発期間の短縮化に威力を発揮する。価格は数量にもよるが12米ドル以下。


(2008/11/14 セミコンポータル編集室)

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