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NEC、3倍性能や1/5以下の価格など4品種の車載用画像認識プロセッサを開発

NECエレクトロニクスおよびNECは、車載用画像認識専用のプロセッサIMAPCAR2を開発、NECエレクトロニクスが2009年上期から順次サンプル出荷をしていく予定である。NECエレクトロニクスは車載用のマイクロコントローラ(マイコン)の市場シェアは第3位で、個別半導体でも車載用を持っているが、SoCの売り上げは小さい。このため、この画像処理専用プロセッサIMAPCAR2でハイエンドからローエンドまでクルマの安全を担う用途を拡大していく狙いがある。

画像処理専用プロセッサとしてNECエレクトロニクスは2006年にIMAPCARというブランド名で売り出したが、高級車種にしか搭載されず、売り上げ拡大にはとてもつながらなかった。今回は、ハイエンドからローエンドまで4品種をそろえ、最初の製品と同等性能なら1/5の価格、最高性能の製品なら3倍の性能を達成しているという。最高性能の場合、従来の先行者認識やレーン認識という単純な機能、あるいはナイトビジョンだけという単独の機能しか実行できなかったが、今回の性能ならナイトビジョンに加え標識の認識もできるうえに、歩行者の認識も可能だという。これまでは立体的な物体としての認識しかできなかったが、性能が向上した結果、人間であるというパターン認識もできるとしている。


IMAPCAR2シリーズの特徴


今回のIMAPCAR2は、アーキテクチャも変えた。第1世代のIMAPCARは同じプロセッサエレメントPEを128個並列処理するSIMD(single instruction multiple data)アーキテクチャだったが、今回は同じ128プロセッサエレメントながら、各プロセッサエレメントの構成も変えた。従来は各PEにRAMを載せたものを1単位としたが、今回は各PEに浮動小数点演算ユニット(FPU)とプログラムキャッシュとデータキャッシュのメモリーを搭載したものを1プロセッシング単位とした。従来は同じ画像処理を全部のPE+RAMで行っていたが、今回は各単位のプロセッシングユニットに独立の演算を行えるようにした。

これによって、例えばクルマの前方に乗用車とその前に小型トラック、隣のレーンに大型トラックを検出したとしよう。その検出には、第1世代品は全体をスキャンすることで2つ前の小型トラックを検出し、もう一度スキャンすることで前の乗用車を、3回目のスキャンで隣の大型トラックを検出する。このため検出時間がかかっていた。今回は、小型トラック、乗用車、大型トラックをそれぞれ一つのプロセッシング単位ずつによって検出する。各プロセッシング単位が異なる処理をする点が前回のIMAPCARと大きく違う。

IMAPCAR2には、ハイエンドのIMAPCAR2-300から、ローエンドのIMAPCAR2-50まで、途中に-200、-100という品種も加わる。-300はプロセッサ数128個で、性能が270GOPS(giga operations per second)、-200がプロセッサ数64個で170GOPS、-100はプロセッサ数64個で動作周波数を66MHzと半減して84GOPS、-50がプロセッサ数32個で42GOPSというスペックである。このうち-100が従来のIMAPCARと同等の性能を持つとしている。

これらの製品のうち、ハイエンドの-300をベースに設計し、そのアーキテクチャを下位に展開した。時間的な制約から-300には90nmプロセス、ほかの3品種には55nmプロセスを適用する。第1世代の製品は130nmプロセスだったため、チップサイズは小さくなったとしている。収めるパッケージは、-300が780ピンFCBGA、-200と-100は357ピンFCBGA、-50は208ピンQFPを予定している。


(2008/10/15 セミコンポータル編集室)

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