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これからのMEMSデバイスは信号処理ICと賢いアルゴリズムが付加価値をもたらす

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次のMEMSデバイスで重要な技術は何か。米国の広報会社Globalpress Connectionが主催したeSummit2009において、このテーマをパネルディスカッションで議論を交わした。Analog Devices、Maxim Integrated Products、Microvision、VTI Technologies、Kionixが壇上でMEMSの次の技術を議論した。このメンバーだけを見ると違和感を覚えるが、議論が始まると最適な人材が集まったといえるまともな議論が展開された。

Analog Devicesは、これまで加速度センサーを1990年初めからクルマのエアバック用に量産してきた先駆者だ。Maxim Integrated Productsはセンサーからの信号処理技術に強い。Microvisionは、MEMSを利用した携帯型のプロジェクタを開発した。VTI Technologiesは、MEMSを利用したセンサーを開発している。ベンチャーのKionix は、MEMSセンサーの作製から信号処理、アルゴリズム、パッケージングに至るまでMEMSセンサーのすべてを扱う。


左からADIのMark Martin、MaximのVijay Ullal、MicrovisionのIan Brown、VTIのScott Smyser、KionixのEric Eisenhut(敬称略)

左からADIのMark Martin、MaximのVijay Ullal、MicrovisionのIan Brown、VTIのScott Smyser、KionixのEric Eisenhut(敬称略)


ADIのバイスプレジデント兼ジェネラルマネジャーのMark Martin氏は、MEMSデバイスが新しいユーザー体験を創り出すことを強調し、これまでのような自動車エレクトロニクスから医療機器や携帯電話、ゲームなどへと応用が広がってきていることを述べた。Apple社のiPhoneや任天堂のWiiなどが民生領域へと拡大しているというわけだ。会場からのコストが下がるかという問題に対して、生産量が上がってくるにつれ学習曲線にのりプロセスが成熟し、コストは安くなるためMEMSのコストは必ず低下することを経験に基づき話した。

続いてMaximのグループプレジデントのVijay Ullal氏は、MEMSデバイスがエネルギー変換の機能を果たしインテリジェントマシンを作りだしてきたことを指摘し、次はコンピュテーションへと賢くなっていくと予測した。Maximはアナログデジタル混載のミクストシグナルICに強いことを武器にMEMSセンサーからの信号処理にフォーカスするが、MEMSは常にアルゴリズムと一緒に関発するものだと指摘した。このことでMEMSセンサーはインテリジェントになる。

実際にMEMSを利用して超小型のプロジェクタを開発しているMicrovisionのセールス&マーケティング担当バイスプレジデントのIan Brown氏は、携帯プロジェクタから光ファイバを通して白い紙に映像を映し出した。これはRGB3個の半導体レーザーと光学系、MEMS反射板を1パッケージに一体化し超小型に作り上げたもの。カムコーダや携帯電話にのせることができる。これはレーザーを水平方向にスキャンしながら垂直方向へとおろしていくことで映像を作っている。ただし問題は消費電力で、携帯電話用のリチウムイオン電池で90分しか持たないことだという。


RGB3個の半導体レーザーと光学系、MEMS反射板を一体化し超小型に作り上げたもの


VTIはかつてASICを設計していたが、今は純粋なMEMSサプライヤになった。動き認識のセンサーをスポーツ運動やコンシューマ用途に応用する。応用が広がっているおかげで、ASICと再配線層、WLP(ウェーハレベルパッケージ)で作るMEMSセンサーをアセンブリして小型化を実現できると述べた。

Kionixは、MEMSの慣性センサーを取り扱っているが、あくまでも標準的な半導体プロセスを使ってMEMSを作製、MEMSに計算能力を持たせて賢いセンサーを作るためのアルゴリズムで他社との差別化を図る。MEMSデバイスは基本的にはユーザーインターフェースに使うもので、アルゴリズムは数学的な方程式や科学の知識が必要になるとして、MEMSセンサーからアルゴリズムをシリコンにインプリメントする信号処理回路も含めたMEMSデバイスを考えている。会場からの質問に対して、アルゴリズムも差別化できる重要なファクタになることを指摘した。

さらに、MEMSセンサー、信号処理回路、再配線層はすべてシリコンにすると、1チップの賢いセンサーができるかという質問に対しては、今のMEMSセンサー、信号処理回路、再配線層などはそれぞれ独立に作り、パッケージで一緒にする方向だ。無理に1チップに集積するのではなく、3次元実装パッケージでも低価格になるという。

MEMS技術の次は、ベンチャーのKionixに見られるように、MEMSだけを生産するのでは差別化できないため、アルゴリズムを開発しそれを信号処理ICチップにインプリメントすることで差別化していく方向であることは全員一致した。これからはハードウェアだけではなくソフトウェアも一緒に集積することで付加価値をつけることになる。


(2009/04/01 セミコンポータル編集室)

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