半導体はどこまで人間の要求に応えられるか、を追求するIMEC
プロセステクノロジドライバは今もメモリー(フラッシュメモリー)だが、戦略的なアプリケーションドライバも必要になる。ベルギーの研究開発コンソシアムのIMECのエグゼクティブバイスプレジデント兼COOであるLuc van den hove氏は、今後迫り来るさまざまなアプリケーションに対応したさまざまなテクノロジーを開発していることを、このほど東京で開催されたIMECエグゼクティブセミナーで明らかにした。
特に、アプリケーションドライバとなる新機能の搭載には、機能の全く違うIPやチップを集積するヘテロインテグレーションがカギとなる。アプリケーションドライバは、1.ノマディックな組み込みシステム、2.ワイヤレスの自立センサーネットワーク、3.バイオメディカルシステム、4.太陽電池、の四つを考えている。
このうち、いつでもどこでも機能を実現できるという意味での1.ノマディック組み込み系が最も市場規模は大きくなると見られている。回路的に必須となる無線RF回路を実現するMEMSやHBT、モノリシックアンテナ共振器、パッケージング、回路モデルなどの研究開発を行う。さらにソフトウエアを切り替えるだけでさまざまな電波や復調方式を受信できるソフトウエア無線技術、低消費電力で多くの機能を効率よく演算処理するためのマルチコアプロセッサやコンパイラ、60GHzというミリ波利用の3Gbps無線、などがテーマになる。
2のワイヤレスの自立センサーネットワークではマイクロワットの電力で動作する超低消費電力技術や、人体につけながらいつでもどこでも体の様子をモニターできるシステム、人間の周りにある自然のエネルギーだけで電子回路を動かすエネルギーハーベスト技術など、人間++技術という捕らえ方でワイヤレスセンサーネットワークを見ている。
3のバイオメディカルシステムは単なる医療用機器に必要なチップではなく、チップ上に神経細胞のニューロンを動かしたり、分子レベルのごく微細なモレキュラディスプレイ、人体埋め込み型の超小型マニピュレータなど、これまでのメディカルの概念を超えた新しいチップやシステムを提案研究する。
4の太陽電池も従来の多結晶や単結晶シリコンのセルではなく、曲げられるくらい薄いシリコン結晶の電池や有機材料を使った再利用可能な太陽電池などを想定している。
メモリーは従来どおり、あるいはやや速いテンポで微細化が進むため、プロセスドライバとなる。CMOSプロセス微細化の極限を探り、32nmから22nmへのリソグラフィ技術と、3次元トランジスタであるFINFET構造、High-kメタルゲートプロセスなどに加え、カーボンナノチューブ配線やIII-V族半導体のモノリシックな集積、ウェーハレベルパッケージングを用いた3次元パッケージのSiPなど、従来技術の延長を手広く揃えている。
従来のSoCでは、メモリー搭載のロジックでは、搭載しやすいようにメモリーセルをロジックプロセスに合わせてきた。これではメモリーセルの面積を消費するためメモリー容量には限度がある。これに対して、IMECの研究テーマは、不揮発性メモリーは集積できる限りの可能な大容量化を目指し、SoCは機能を徹底的に追及する。それらをSiPの3次元パッケージに実装すれば、容量や機能といった点で妥協する必要がなくなる。言い換えれば、半導体でいけるところまでいくような、プロジェクトであるといえる。