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三菱電機、産業機器向け液晶画面のGUIを豊かにするグラフィックスIPコアを開発

三菱電機情報技術総合研究所は、産業用機器のグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)に使う小型高速のグラフィックスIPコア2種類を開発した。一つはアウトラインフォントに替わる新しい文字フォントをサポートするIP、製品名Saffronで、もう一つはGUIでアイコンやグラフィックスパーツを選択すると即座に変換されるというIPである。これは製品名Sesamicroと呼んでいる。

三菱の情報研はFPGAでハードウエア回路を組みデモした
三菱の情報研はFPGAでハードウエア回路を組みデモした


これは、産業用機器のユーザーインターフェースをグラフィカルに豊かにしようというもので、通勤電車内の行き先表示板や工場内での工程管理など作業者が互いに情報を共有するような用途を考えている。こういった工業用コンピュータのGUIは視認性と素早い反応において、これまではイマイチ悪く、産業用の組み込み機器でもGUIの高速処理ができるようするため、開発された。今のところ、三菱電機内の産業機器部門に納入するキャプティブ市場を考えている。

Saffron文字フォントは、拡大・縮小・回転などのLCDパネルをタッチしても即座に表示する。描画性能は8万文字/秒、文字フォントの権威であるAbobe Systems社のFlashにすでに採用され、Monotype Imaging社へライセンス供与している。従来のアウトラインフォントだと拡大した時に、文字がギザギザになるジャギー補正は使っていない。その代り、日本語文字の線の真ん中に骨組みを作る、「ストロークフォント」にも対応している。このフォントはアウトラインフォントとは違い、使用するメモリー容量を1/4に減らせるというメリットがある。

このIP技術は同社の米国ボストンにある研究所と共同開発され、これまではアルゴリズムを搭載したソフトウエアという形で持っていた。しかし、このアルゴリズムをハードウエアIPに落とし(現実にはFPGAで配線)、高速性能を達成した。もちろん英語だけではなく2バイトコードにも対応し、メモリーはSDRAMで十分という優れモノ。このアルゴリズムは画面を小さなタイルに分割してシリアルに描画することで回路規模を小さくした。回路規模は10万ゲート以上から。グラフィックスを設計するときにOpen VGなどに準拠するような設計環境を構築すると便利になる分、回路規模は少し増加する。

もう一つのGUIに特化したSesamicro (Scalable and Smooth Animation Rendering Micro Core)は文字ではなく、グラフィックスのアイコンや画像要素などをスムースに拡大・縮小・回転という動作を行うためのグラフィックスIP。これらのIPは、解像度には関係せず、フルハイビジョンでさえ、見ることができる。デモ用にはXGA画面を用いたが、色の濃淡をバック画面に表示しており塗りつぶしのレンダリング動作もできる。実際にデモした画面では周波数66MHzと遅いPowerPCプロセッサを使い、高速描画を表している。

いずれのIPも回路規模は10万ゲートと小さく、IPとして組み込み系に使うことを考えている。場合によってはFPGAの隙間にこのIPが入れられるとしている。Open VG準拠をこれからの社内でのプラットフォームとして開発を進めていく。

もしこのIPを開発せず市販のライブラリから回路を起こすなら、回路規模は10倍にも膨らむとしている。情報技術総合研究所は2009年中に何らかの組み込み機器に入れると意気込んでいる。


(2009/02/10 セミコンポータル編集室)

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