Semiconductor Portal

HOME » セミコンポータルによる分析 » 技術分析

常に信号を捕捉しながら低消費電力のGPSチップ、携帯応用を狙うAir Semicon

PND(ポータブルナビゲーションデバイス)やデジカメ向けのGPSチップを英国Air Semiconductor社が開発した。これまでの1/100という低い消費電力で動作し、衛星からの電波が届かない地下に潜っても素早く位置を認識する。Air Semiconductorは2006年に設立したばかりのファブレス半導体ベンチャー。低消費電力で位置情報を常時捕捉する方式のGPSチップを売り物にしている。10月にファイストシリコンがテープアウトする。サンプル出荷は1月を予定している。

GPS測定を常に行うと何ができるだろうか、という発想からこのAlways-On技術を開発したとAir社アジア事業開発担当副社長の和泉任一氏はいう。位置の精度を少し緩めても常に測定する。


Air Semiconductor社アジア事業開発担当副社長の和泉任一氏


従来のGPS技術では、最初の位置を検出するのに時間がかかる。これはTime to First Fix (TTFF)問題と呼ばれ、通常は30秒以上かかり、信号条件が悪い場合には数分かかるという。一度衛星を見つけてから追尾するのは、4回/秒の周期で処理できるので、2回目以降は素早く見つけることはできる。Always-OnならTTFF問題がなく、常に位置を捕捉できる。

ただし、常に位置を追いかけていると消費電力が大きくなり、携帯機器には向かない。そこで、位置精度をフレキシブルに変えることで消費電力を下げる工夫を行った。具体的には位置精度と消費電力は相反する関係にあり、1mAしか流さない場合には精度は300mとさほど良くないが、18mA流すと精度は5m以内に上がる。つまり、目的地から遠い場合は低消費電力モードで動かし、目的地に近付くと高精度モードで動かす。目的地に到着するまでに大部分の時間は目的地から遠いため、低消費電力で動かすことができる。

ビルの中など電波の届かない場所に移動し信号が途切れると、最後の位置を認識しておく。これには信号の情報を常に記録しながら、信号が途切れると、最後の信号の位置の記録から知る。

応用の一つがデジタルカメラで、写真の中に位置情報を常に入れることができる。日時を写真に入れるのと同様にどの場所で撮った写真なのかがすぐわかる。

第二世代のチップでは、ホットゾーンサービスを考えているという。これは、携帯電話機と組み合わせて使うような応用であり、あるゾーンから出る、あるいは入る情報を携帯電話に知らせるという応用である。例えば、子供が日常遊んでいるゾーン内にいれば安全、そこから出ると携帯電話に知らせる、という機能だ。さらに広告、マーケティングへの応用も考えている。例えば、あるショッピングセンターの近くを歩いている消費者がいれば、その近くのデパートがバーゲン情報を携帯電話に送信し、そのデパートへ足を向けさせる、という応用だ。流通業者が荷物をあるゾーンに入ったかどうかを知ることもできる。

このチップは、RF回路とベースバンド復調回路、マイクロプロセッサ、パワーマネジメント回路などを内蔵しており、130nmCMOS技術で7mm角というサイズである。外付けのアンテナは必要。製造はTSMCなどのファウンドリへ委託する。2009年から2010年、2011年にかけて製品をシリーズ化していく予定だ。

ご意見・ご感想