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ドイツのインフィニと日本のエプソンが協力、最高のGPSチップを作り上げる

ドイツのインフィニオンテクノロジーズ社は、セイコーエプソンと共同で、入力感度が-165dBmと極めて微弱な電波を受信、位置を特定できるシングルチップのGPSレシーバーを開発した。インフィニオンの得意なローノイズRF技術と、エプソンの得意な4つのGPS衛星からの位置計算アルゴリズムを組み合わせた、理想的なWin-Winの共同開発といえる。

これまでインフィニオンは、スマートフォンやローエンドの携帯電話向けRF送受信機を得意とする企業であり、GSM/GPRS、EDGEだけではなく3.5Gと呼ばれるHSDPAなどの携帯プラットフォームも手掛けてきた。携帯電話が2極化してもGPSは欠かせなくなると見ていた。そこで、130nmCMOS技術を使ったHammerheadと呼ぶPMB2520/25を累計4000万個以上生産してきた。一方、エプソンはNTTドコモ向けにGPSモジュールを出荷してきたが、RF部分は外部から購入していた。GPSモジュールを累計で3000万個販売してきており、その大きさは6mm×7mmで、この1パッケージの中に2チップを入れた構成であった。

インフィニオンの得意なRFやアナログと、エプソンの得意なGPSアルゴリズムを合体

インフィニオンの得意なRFやアナログと、エプソンの得意なGPSアルゴリズムを合体


今回のGPSレシーバーは、両社の良いところだけを取り込んだシングルチップのデバイス。高感度な上に2.8mm×2.9mmと小型で、オープンスカイの条件で衛星からの信号を最初に捕捉するまでの時間TTFF (Time to First Fix)は1秒以下と高速である。通常は数秒かかるといわれている。

入力感度の-165dBmは、10のマイナス16.5乗ミリワットと非常に微弱な電波をとらえることができるという意味である。現実の感度としては、木造住宅なら家に入っていても信号を捕捉でき、鉄筋コンクリートのビルディングでは窓際から10m程度離れても受信できる感度だと、セイコーエプソン GPSビジネス推進部の北沢豊部長は言う。インフィニオン社の従来製品Hammerheadだと、-160dBmの感度しかなくビルの窓側から4~5mくらいまでしか受信できなかったとしている。

XPOSYSと呼ぶ今回の新製品は65nmCMOS技術で製造して小型・低消費電力を達成した。Hammerheadと比べると、外付け部品は10個と60%減、基板に搭載するモジュールは26平方ミリメートルを半分に、安定状態でのトラッキングモードにおける消費電力は9mWと1/4に小さくなった。このICでのGPSの動作はこれまでと同様だが動作は高速で消費電力は少ない。最初に衛星を見つけ、信号を捕捉するのにかかる時間のTTFFは1秒以下と高速だが、消費電力は70mW費やす。次に衛星を使って位置を計算するのにかかるトラッキング状態では37mW費やし、安定して追尾できる状態になるときが9mWというわけだ。


インフィニオン/エプソン・チームによる最強のチップ。ウェーハレベルBGAに実装

インフィニオン/エプソン・チームによる最強のチップ。ウェーハレベルBGAに実装


このシングルチップには、ベースバンドの送受信回路、A/Dコンバータなどのミクストシグナル回路、LNA(ローノイズアンプ)、周波数シンセサイザ、パワーマネジメント回路を含んでおり、GPSの計算アルゴリズムのソフトウエアは携帯電話のデジタルベースバンド回路の中に含ませている。

セイコーエプソンがインフィニオンを選んだ理由の一つは、Hammerheadを実際に設計し量産した実力の持ち主であること、とエプソンの北沢部長は明言する。サンプルは2009年3月末から、量産は2009年第3四半期から始める。


(2009/02/13 セミコンポータル編集室)

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