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ナノテクの代表選手、フラーレンC60を塗布加工できる

炭素原子がサッカーボール状に構成されているフラーレンC60が、半導体プロセスに威力を発揮しそうになってきた。三菱商事、三菱化学などが出資するフロンティアカーボン社は、フラーレンを添加した電子ビームレジストがパターンを加工できることを実証した。

フラーレンは直径約0.7nm中に炭素原子が60個詰まったサッカーボール状の分子構造を持つ。密度が高いため機械的な硬度は高い。半導体チップの最小加工寸法が32nm、22nmなどと原子レベルに近づくにつれ、有機レジストの分子の大きさがパターン形状を左右するだろうと言われている。フラーレンは分子が小さいため微細な寸法を加工するのに有望視されていた。


ナノテクの代表選手、フラーレンC60を塗布加工できる


しかし、フラーレンは有機溶媒に溶かすことが難しく、レジスト材料に応用することが難しかった。溶媒に溶けにくいのは、フラーレン分子の凝集力が強く直径20μm程度の塊になることが多かったからだという。クラスタ状態になるのを防ぐため、溶媒と親和力の強い置換基をつけることに成功した。このほど、その量産のめどが立ち、フロンティアカーボンはフラーレンの販売に力を入れ始めた。

これまでの置換基をつけないフラーレンなら1wt%未満しか溶媒に溶けなかったという。同社は新しいフロンティアカーボンの製品化を進めるため、置換基をできるだけ少なくしてフラーレンの特性を確保しながら、溶媒に溶けるものを捜し求めた。レジスト材料として実績のあるPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)やPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、乳酸エチル、アニソールなどの溶媒には10wt%以上溶ける。この結果、レジストを従来と同じように塗布できるようになった。

加えて、フォトレジストのエッチング耐性は同じような種類のレジストと比べ15~30%向上したという。これはCF系のドライエッチング条件下にレジストパターンをさらし、その細り具合をチェックした。実際のレジストパターンは公開できないが、LER(ラインエッジラフネス)も向上したとしている。配線幅、配線間隔として、50nm,70nm,100nmのパターンを加工したという。

今回のEBレジストに加え、ArFレジストにも使えそうだ。これまでの有機レジストでは加工が難しくなるような微細な寸法の加工に向くためだ。加えて、誘電率が2程度のlow-k材料への応用や、電極表面積の大きな電気二重層キャパシタへの応用も期待されている。もともとn型半導体であるフラーレンを有機溶剤に溶かしp型半導体に塗れば太陽電池が出来るという発表も産業技術総合研究所からも出ている。

本格的な量産が進めば価格は、従来の10万円/gから量産時には500円/g程度まで下げられるとしている。

フロンティアカーボン社は、フラーレンそのもの、および溶液に溶かしたフラーレンを販売する材料メーカーだけに、レジストパターン加工の実験条件や露光、エッチング条件などの詳細はまだ話せないとしている。

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