セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

Broadcomが次世代携帯向けWi-Fi/Bluetooth/FM送信機集積チップを開発

|

ファブレス半導体で米Qualcommに次ぎ第2位のBroadcom社が携帯電話向けにWi-FiやBluetooth、FM送受信回路を1チップに集積したICを開発、サンプル出荷している。なぜ、これらの機能を携帯に載せ、1チップに集積したか。その中身を見ると、次世代の携帯電話機で何をしようとしているのかが見えてくる。これまでの国内携帯電話にはカメラやテレビ、ゲームなどの機能が載っているが、電話料金を気にせず写真や音楽などの重いファイルを誰もが取り込むことは通信キャリヤにしても気の進まないことである。

BCM4329


重いファイルを電話料金とは関係なく比較的速い通信速度でダウンロードできるWi-Fiをうまく利用する。Wi-Fiは従来の802.11bから.11a、.11g、.11nへと進化しており、データレートが着実に向上している。これまでの無線LAN、Wi-Fiはデータレートが公称54Mbpsとしても数人で使えばその分データレートは遅くなってしまうため、更なる高速化が求められている。

加えて、無線LANはこれまでのパソコン用途から、携帯電話機やゲーム、音楽プレーヤーをはじめとする携帯機器へとシフトしてきている。今後は、携帯機器からさらにBluRayやデジタルテレビ、DVD、セットトップボックスなど据え置き機器でインターネットのコンテンツを大画面で見ようという流れがある、と同社バイスプレジデントでワイヤレスコネクティビティグループWLANビジネスユニット担当のMichael Huriston氏は言う。携帯電話のモバイルテレビにワンセグだけではなく13セグ(フルセグ)や挙句の果てはフルHDTV画像まで入れようとする動きはまさに無線LANで携帯テレビを大画面テレビで見るのにピッタリの応用である。

さらに、位置情報はGPSだけでは不十分である。というのは、ビルの中や地下街に入るとGPS電波の影になり受信できなくなるからだ。無線LANだとそれぞれのデバイスがIPアドレスを持つため、例えば地下街のスターバックス店にいればそのサーバーから存在位置を確認できる。もちろん、携帯電話通信網の音声やデータをたくさんの人が使えばトラフィックが混雑してしまうが、無線LANはこのトラフィックを緩和する。

Bluetoothは、携帯電話なら当然海外ではたくさん使われているが、日本でも少数の携帯電話には搭載されている。クルマ社会の欧米では、電話をかけながら運転することは酔っ払い運転よりも厳しい罰則があると言われており、常に両手でハンドルを握れるようにすることは不可欠だからだ。Bluetoothがハンズフリーやヘッドセットなどで両手運転を支援する。日本はまだこの種の法律がようやく出来ても、適用例はこれまでほとんど知られていない。

従来チップのBCM4325にもFM受信機は集積されていたが、今回のBCM4329にはFM送信機も集積している。これは、携帯電話機や携帯音楽プレーヤーからの音楽をFM無線で聴くために設けた。家庭のFMステレオやカーステレオでiPodなどのプレーヤーの音楽を無線で聴くことができる。ドッキングステーションがなくてもステレオを通してiPodの音楽を大きな音で聴ける。

この製品では2.4GHzのBluetoothと2.4GHz/5GHzデュアルバンドのWi-Fiをシングルチップに共存させており、全体の消費電力は190mW程度だとしている。2007年に発売したBCM4325と比べ、40%消費電力は少なく、STBC(Space Time Block Coding)技術により信号を強めることで通信カバレージを4325より50%上げ、65nmプロセスにより15%小型化した。弱い信号でも受信できるようにするためビームフォーミングや時分割で二つのダイバーシティアンテナを受けられるような技術を使っているが、アンテナ一つでも受信可能だという。


BCM4329


2.4GHzの送受信機を1チップに内蔵させているため、使う側は干渉の心配はいらない。設計としては、共存させるため主に二つの技術を導入した。一つはガードバンドとウェル構造を導入して、それぞれの回路を切り離した。そのための面積増加のペナルティは5%程度だとしている。もう一つは、例えばWi-Fiを使っているときにBluetooth信号がやってくると、優先順位の低い信号を切ってしまうという技術だ。優先順位は携帯電話機への応用を意識して、Bluetooth音声が入ると音声を優先し、BluetoothデータだとWi-Fiを優先するように設定している。

製造プロセスは65nmのCMOSプロセスを用い、TSMCやチャータード、UMC、SMICなどのファウンドリを利用する。

WiMAXはWi-Fiの距離を長く伸ばす方式であるが、同社は今のところ、WiMAXには力を入れずLTE(3.9世代通信)にフォーカスしているという。WiMAXには使用ライセンスを各国政府から受け取らなければならないという問題があり、昨今の不況によるリソースの分散はできないことからLTEを決めたと、Huriston氏はいう。


(2008/12/12 セミコンポータル編集室)

月別アーカイブ