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金属配線でカスタム化するマイコンをAtmel が発売、高速低消費電力を可能に

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 米Atmel社がカスタマイズでき、FPGAよりも高速で低消費電力、低価格の32ビットマイクロコントローラCAP (Customizable Atmel Processor)を発売する。FPGAを使って実行するDSPアルゴリズムを使った比較例では8倍も速かったという。

特に、マイコンと外付けFPGAを組み合わせてOFDMやGPS相関器などを構成する場合、外部ロジック全体に対してクロック周波数を50MHz以上に上げることは難しいといわれている。シングルチップに同等な機能をハードワーヤードで実現しメタル配線でプログラムすれば、SRAMベースのFPGAよりも高速で、低消費電力にできる。

そのシリーズの一つ、AT91CAPマイコンには、従来のコアや各種周辺インターフェース、高速バスに加え、メタルでプログラムするブロック回路(MPブロック)がある。このメタル配線をプログラムすることでカスタマイズする。MPブロックには最大200万FPGA相当ゲートが含まれている。このMPブロックを使うのは、1) FPGAでよく使われてきたようなIPやDSPアルゴリズム、2) 一つ以上のプロセッサコアの追加、3) まだ標準品になっていない周辺回路、など。

最初の製品ファミリは、ARM社のARM7、ARM9のプロセッサコアを使うAT91CAP7、AT91CAP9にカスタマイズした製品になる。既存のARM7および9と、FPGAを組み合わせた回路を1チップ化する場合でも移行にかかるコストは15万ドルである。1チップ化することで最悪時のスタティックな消費電力は3〜4mWと小さく、FPGA回路よりも3桁少なく、ダイナミックな消費電力もFPGAの1/10程度という。

AT91CAP7マイコンは、6層のバス配線マトリックスと4層のバスマスター配線を持ち、後者のバスマスター配線がMPブロック専用の配線となる(図1)。配線層が十分取っているためバス競合がなく、オンチップのバンド幅を広くとれ、最大19.2Gbpsを実現できる。

AT91CAP9マイコンは、バスマスター配線が3層で、バスマトリックス配線は12層構成である(図2)。MPブロックのバンド幅は38.4Gbpsと高速対応できる。

MPブロックは、別のプロセッサを搭載することもできる。例えば、キャッシュ付きのARM926EJ-Sとか、8ビットのマルチコアなどがある。応用例では、数多くのセンサーを備える工業用のコントローラなどには、複数のセンサーに各8ビットマイコンを多数搭載するチップがほしい。多数のマイコンを1チップに搭載すればシステムのコストを減らし、消費電力を下げることができ、システムを簡素化できる。このとき、バスマスター制御とDMAアクセスはMPブロック部とシステムバスとの間に設けるとMPブロックのプロセッサとのつながりが極めて良くなる。

開発ツールとしては、Atmel社のARMベースマイコンと同じCコンパイラやRTOS、OS、ICE、IDEを使用できる。つまりサードパーティのツールを使えることになる。もちろん、Atmelの提供するGNU gccCコンパイラやGNU gdbデバッガなどのツールも利用可能だ。単価は、5万個購入する場合AT91CAP7が5.44米ドル、AT91CAP9Sが10万個購入時で13米ドル。


AT91CAP7 ARM7コア内蔵のメタル配線プログラマブルなマイコン

図1 AT91CAP7 ARM7コア内蔵のメタル配線プログラマブルなマイコン


AT91CAP9 ARM9コアにメタルプログラマブルのMPブロックをARM926EJ-Sで構成した例。

図2 AT91CAP9 ARM9コアにメタルプログラマブルのMPブロックをARM926EJ-Sで構成した例。

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