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Applied Materialsがウェーハのリサイクルセンターを公開

Applied Materials(AMAT)社は6月にウェーハのリサイクルセンターを台湾の台南市に開設したが、このほどその詳細を明らかにした。AMATは地球温暖化を防ぐ、京都議定書を守る、太陽電池ビジネスに注力するなど、環境に配慮したビジネスに力を入れる決断をした。今回のウェーハをリサイクルして廃棄せずにもう一度生かそうというビジネスもその一環である。

1枚のウェーハを単結晶の引き上げから、スライス、ポリッシュを経て鏡面ウェーハを1枚作るのに必要な電力をAMATが見積もったところ、2,100kWhにも達する。もし5枚のウェーハを製造すると、米国の1世帯が1年間に消費する電力に匹敵するという。これに対して、リサイクルウェーハは200kWh以下、すなわち1/10以下の電力ですむ。もし、半導体プロセス工場で使うためのウェーハを代表的な生産能力として、月産4万5000枚とすると、1年間で米国の家庭10万世帯分の電力を削減することに相当するという。

AMATが出資しているPhoenix Silicon社は新竹にあるが、今回公開した台南工場は100%AMATが出資した工場である(写真)。台南に設立した理由は、新竹にある半導体企業の敷地がもはや限界に来ている企業は最近、台南の工業団地に進出しているため。世界最大のファウンドリ企業のTSMCやUMCなどがすでに進出している。


台湾Applied Materials社 台南工場の正面

台湾Applied Materials社 台南工場の正面


ウェーハリサイクルビジネスでは日本のラサ工業がすでに実績を持つが、台南のリサイクルセンターでは、300mmウェーハのリサイクルに専念し、120nmプロセス向けのウェーハから始める。リサイクルするウェーハは、ラサ工業と同様、製造装置内のダミーウェーハやパーティクルチェックや膜厚チェックなどに使ったウェーハを使う。さらに、65nm〜120nmプロセスに集中していく。

AMATはすでにユーザーの認定を取り始めている。認定試験が終わるまでに3~6か月かかるため、キーカスタマの認定は年末に終わり予定。

AMATの強みは、これまで形成やエッチングしてきた膜を短時間で除去すること。特に、銅配線とLow-k材料を何層も重ねて使うロジック系のウェーハが得意だという。Low-k材料としてBlack Diamond膜を使っているウェーハは除去することが難しいと、台湾AMATのApplied Global Services部門の易錦良氏は言う。共有結合ががっちり結びついているダイヤモンドだからだとしている。AMATがBlack Diamondを除去するプロセスでは、除去する厚さはわずか9μmしかない。このため、775μmのウェーハを削って、許容される680μmまで削っても11回程度使えるというメリットがある。ただし、最初のウェーハ表面に傷があれば除去する部分はもっと厚くなり、使用頻度は落ちる。


台湾Applied Materials社Applied Global Services部門総経理の易錦良氏

台湾Applied Materials社Applied Global Services部門総経理の易錦良氏


台南のリサイクルセンターは、面積3120m2の2階建ての建物である。1階には4つのエリアがあり、それぞれ除去工程を受け持つ。まず、除去すべきウェーハは、片面だけ研磨する、両面研磨する、銅を研磨する、の三つに分かれる。最初に、たとえば銅配線プロセスならウェーハの銅を除去し、次に前洗浄を行う。ここではスラリーなどが残っているため、それを徹底的に除去する。次に、クラス10というクリーンルームでクリーニングする。最終のクリーニングでは、クラス1というゴミのないところで行うが、ここではミニエンバイアラメントを利用する。最後にKLAの装置を使い、表面の清浄度や厚さなどを測定する。

Black Diamondの除去は、従来の方式と比べシリコンのロスが少なく、短時間にシリコンを傷つけることなくできるとしている。その除去にはCMPは使っていない。というのは時間がかかりすぎるためだという。基本的にはサンドホィールを使うようだが、その詳細は明らかにしない。1枚の価格は40〜90ドル。典型例では、ほぼ4日間で鏡面研磨のウェーハを出荷できるという。ウェーハ処理能力は当初4万5000枚/月だが、最大12万枚/月まで可能だとしている。

今後は、先端の微細パターンを形成したウェーハの加工も進め、IPを守りながら、シリコンのロスも減らしていく。加えて、リサイクルサービスだけではなく、シリコンベンダーともコラボを組んでいきたいとしている。

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