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厚さ50μmのリチウムイオン電池を作製できる技術、装置をアルバックが開発

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リチウムイオン2次電池の厚さがなんと0.1mm以下と紙のように薄いバッテリが可能になる。あまりにも薄いバッテリなので、ICカードやウェラブルコンピュータ、生体用デバイスなど、折り曲げ可能なフレキシブルな電池を実現できる。アルバックはアルバックマテリアルと共同で50μm以下の薄膜でリチウムイオン電池を生産できる技術と装置を開発した。

薄膜のリチウムイオン電池


この薄膜のリチウムイオン電池は、電解質を固体化しスパッタや蒸着などの真空装置で生産できる。この薄膜リチウムイオン電池は、正極と負極に電極活物質層、電極集電層、固体電解質層、封止層という4つの部分から構成されている。正極のコバルト酸リチウム(LiCoO2)と固体電解質のリン酸リチウム(Li3PO4)、電極集電層は枚葉式スパッタ装置(SME-200J)で形成する。電極集電層は負極側ではNiかCuを、正極側ではMgO/Ti/Ptをそれぞれ使う。負極の金属リチウムは真空蒸着機(ei-5)で形成し、有機膜・バリヤ層・有機膜の3層構造からなる封止層は枚葉式蒸着重合装置(PME-200)で形成する。

固体電解質を使うため、従来のリチウムイオン電池で懸念材料であった液漏れの心配がなく、爆発や発火の心配もない。薄膜で形成する電池であるため、半導体のプレーナダイオードのような構造をしている。

スパッタ装置はDC、RFマグネトロンスパッタ方式であり、正極のLiCoO2を形成した後にそれを結晶化させるためのRTA(高速アニール)室など最大5室のプロセスチャンバを持つ。スパッタリングターゲットは正極にLiCoO2、固体電解質にLi3PO4を開発している。アルバックマテリアルは高密度で均一に作ることに注力した。直径440mmの大型ターゲットも開発している。プラズマダメージを回避するための工夫を施しているとしている。

成膜するのは正極がLiCoO2、電解質はLiPON、負極がLiであるが、ターゲットには正極、電解質とも酸素が多く含んでいるため、窒素でターゲットを還元して成膜する。固体電解質のスパッタレートは5.4μm/時と従来よりも3倍以上速い。

封止層はWLP(ウェーハレベルパッケージ)のようにデバイスに被覆するわけだが、水蒸気を吸いやすい有機膜を保護するため、バリヤ層をコーティングして水蒸気による劣化を抑えた。

面積20mm×20mmのセル活性領域を作製したNuricell社のLiイオン電池では、トータルの厚さが50μmで、動作電圧は3.0~4.1V、電流容量は0.5~1.0mAh、最大電流が15mA動作温度-20〜120℃という特性が得られている。この薄膜電池をICカードにも実装した例を示している。


OTP CARD


今回、アルバックはこの試作品をSEMICON Japanで展示した。この試作品や技術を潜在顧客に見てもらい、その反応を見ながら新しい可能性を探っていくとしている。


(2008/12/03 セミコンポータル編集室)

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