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「半導体産業は50~100年後も伸び続ける」、Sze教授のSSDM特別講演

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元米ベル電話研究所の研究員で現在台湾国立交通大学教授であり米スタンフォード大学教授でもあるSimon M. Sze氏が9月23日つくば市国際会議場で開催された第40回国際固体素子材料コンファレンス(SSDM)前夜の特別講演において、半導体ナノエレクトロニクスをベースにしたエレクトロニクス産業は今後50年〜100年間着実に成長を続けることを予言した。

Simon M. Sze氏


1990年にベル研究所を55歳で定年退職した後、台湾に戻り新竹にある国立交通大学の教授になったSze氏は「ナノエレクトロニクス技術:21世紀の課題」と題する講演の中で、今後の半導体技術の課題として、5つの問題を取り上げ、議論した:ウェーハサイズの大口径化、リソグラフィ、デバイス構造、配線、半導体技術のエコノミーである。それぞれの課題を提示した後、未来について極めて楽観的に語った。

ウェーハは450mm化への課題、リソグラフィは液浸、ダブルパターニング、水以外の高屈折率材料、EUVなどの可能性の難しさ、FINFETなどの3次元FET構造、カーボンナノチューブFET、分子デバイス、量子ドットデバイスなどについて語った後、結局ロジックデバイスは10nmの微細化時代が来てもやはりMOSFETが主流になると述べた。

高集積化をけん引する不揮発性メモリーについては、MRAMやFeRAM、PCRAM、RRAM、ポリマーメモリー、ミリピードメモリーなどの新しい不揮発性メモリーの候補が出ているが、結局は単純構造の浮遊ゲート型メモリーが勝つだろうと見ている。「Simplest is always winner」と語った。そのカギは浮遊ゲートの厚さは極限まで薄くし、容量を減らすことだという。

高集積なICでは、デバイスの動作速度よりも配線の方がスケーリングリミットを律速するとして、配線ではカーボンナノチューブ(CNT)が有望だとの見方を示した。これはメタリックなCNTでは平均自由工程が1μm以上と長く、抵抗率が5μΩcmと小さいため、10の9乗A/cm2という大きな電流密度の電流を流せる。また、シリコンベースのマイクロフォトニクスによる配線遅延問題を突破するという手も紹介した。

半導体技術の経済性については、ウェーハプロセス工場の設備コスト、運転コストが極めて大きくなるという問題に対しては、今後の半導体産業の拡大により解決していくだろうと楽観的な見通しを打ち出している。2030年には半導体産業は1.6兆ドル、エレクトロニクス産業は10兆ドルになりこれは世界総生産の10%に膨れ上がると予想している。

この根拠として、かつての船舶のタービンエンジンの馬力はムーアの法則のように伸びたが、1942年にフラットになり、創成期から伸び続けてきた旅客機の乗客数は1979年にフラットになった。しかし産業はともにその時から広がってきたとしている。半導体産業も同様に1980年から2000年にかけて年率平均14%で成長したが、2000年以降はひとケタ%とややスローダウンしている。むしろこれから半導体産業の多様化が始まり、産業が広がっていくとSze氏は考えている。

こういった同氏の見方は楽観的すぎないかという質問に対して、同氏はこれまでの半導体産業を見続けてきたエンジニアとして、「20年以上前には半導体には1μmの壁があり、これが限界だとTexas Instruments社の第一線のエンジニアが述べていた。その後0.25μmが限界だという説も飛び出した。1nmのMOSFETの動作シミュレーションにおいてやはり動作すると発表されている」と答えた。

講演会の後の懇親パーティに席上においてセミコンポータルの記者の質問に対しても、「どのような時にもさまざまなバリヤーを乗り越えてきて現在の半導体産業がある」として、同氏は悲観的な限界論を述べることに意味を感じていない。

最後に、2030年の世界市場の中で最も規模の大きな製品は携帯型データ通信機器(portable data communication)で、1兆2600億ドルになろうと同氏は述べた。ちなみに2番目に大きな市場の製品はパソコンで9400億ドルだと予測する。このころにはバイオテクノロジが本格化するものの、エレクトロニクスほどの大きな市場にはならず、DNA農産物は3200億ドルにとどまるとみている。

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