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複数の3G通信規格の半導体チップが各社から続出

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3Gの延長であるHSDPAやHSUPAなどの3.5Gの規格や4Gなどの延長技術LTE(long term evolution)を使った携帯電話ネットワークに対して、通信範囲が10km以内あるいは50km以内で、70Mbps程度のデータレートで通信できるWiMAXがIntel主導で進められている。インフラが出来上がっているのは言うまでもなく、3Gあるいはそれ以降のセルラーネットワークであるが、WiMAXがどこまで進むかはネットワーク構築の早さ次第だ。

この携帯電話の世界では、3Gネットワークの方が出来上がっているという点で圧倒的に有利ではあるが、WiMAX陣営の反撃の勢いは強まっている。特に、3Gのインフラができていない海外では3GもWiMAXも同じ土俵で競争することになる。WiMAXが主流になる可能性は低くはない。進歩の程度があまりにも早いため3G陣営はうかうかしていられない。

こういった通信業界を見て半導体チップメーカーは、2.5Gあるいは3GのセルラーネットワークとWiMAX向けの両方のチップを続々、企画設計している。たとえば、米国のテキサスインスツルメンツ社は、3G以降のセルラーネットワークの基地局向けチップを開発する一方で、WiMAXのインフラ向けチップの開発にも力を入れており、どちらに転んでも傷を浅くすませるための準備を着々と整えている。Mobile World Congressでは、両方のチップを作るための開発ツールを展示した。

3G以降の基地局向けのDSPとして、TIのTMS320TCI6484は、数値計算を高速に行うための物理層処理とMAC処理の論理部分の両方を1チップに集積した。論理を組み合わせてタスクを行うときに、数値計算機能が落ちてしまうが、この二つを集積することでこれまでハードワイヤードのコプロセッサで実現していた機能をフレキシビリティのあるソフトウエアで実現できるようになった。これにより、基地局を3.5GのHSDA/HSDA+やLTEなどのインフラ応用と、WiMAX Wace 2のような複雑な処理を書き換えられるようになる。RISCコプロセッサも不要になる。DSPプロセッサコアにはTMS320C64+を集積した。

TIは、これ以外のチップでも、TMS320TCI6488というHSPA以降の3Gを狙い、基地局というインフラ設備向けのマルチコアのDSPを開発、展示した。この製品を使えば、基地局向け電子機器メーカーは、HSPA、HSPA+、LTEとシームレスに電子機器製品を展開しやすくなる。携帯電話機向けにもOMAP3アプリケーションプロセッサとそれを使った開発キットを発表した。ARMのCortex A-8プロセッサをコアとし、フルHD規格のカムコーダや携帯インターネットデバイス、スマートフォンなどに威力を発揮するチップである。GoogleのスマートフォンアーキテクチャであるAndroidをサポートするため、OMAP3を搭載した開発キットZoom Mobile Development Kit (ZMDK)も発表している。詳しくは、こちらを参照。

NXPセミコンダクターはEDGEとWiMAXのデュアルモードのリファレンスボードを開発、展示した。EDGEネットワーク用のNexperia Cellular System Solution5210と、携帯電話用のIntel WiMAX Connection 2400ソリューションを一緒に搭載することによって二つのワイヤレス規格間を容易に移行できるようになる。このリファレンスボードが入手可能になるのは2008年の後半になる。

米フリースケールセミコンダクター社は、3.9GのLTE機能をFPGAボードで実現、デモンストレーションした。これは、復調とデコーディング、MAC層デコーディングの機能をボード上で実現した。デモでは、帯域20MHzのリソースを100分割し、64値QAMの復調処理を行い、信号品質が低下しても、常に受信できるようにするため、2個のMIMOアンテナを用意し、誤り訂正技術であるTurboデコーダで映像品質を確保している。
 
フリースケールは、携帯電話機向けのベースバンドとアプリケーションプロセッサの分担をきっちりと分けた。従来バースバンドのプロトコルスタックのレイヤー1,2,3のうち、レイヤー3をアプリケーションプロセッサ側に置いていたが、これをベースバンド側に移しベースバンド処理を行うDSPにソフトウエア無線の役割を持たせた。アプリケーションプロセッサは共有メモリーを利用し、シンビアンOSやグラフィクスインターフェースを持たせた。これによって同じ2チップでもフレキシビリティとチップ面積の縮小を両立を果たした。

こういったベースバンド処理をともに集積しようという試みはソフトウエア無線技術が本命とみられているが、高周波のRF回路のデュアル化なら複雑なアルゴリズムはいらないため、比較的容易に集積できる。ルネサステクノロジは、WiMAXの集積ではなく、2Gと3Gの集積化をRF回路において進めている。2Gの4周波数(850MHz/900MHz/1.8GHz/1.9GHz)と3G(W-CDMA)を1チップに集積した。さらにHSDPAのCat 7&8(最大7.2Mbps)もサポートしており、RF回路のグローバル化にも対応している。

ルネサスと同様、TIもRF回路の高集積化を進めている。高周波チップGC5322は、デジタルアップコンバータとクレストファクタリダクション(CFR)、デジタル歪みの線形化回路を搭載しており、複数のキャリヤに向けたパワーアンプの効率も上げることで、集積度を上げ部品コストを削減できるとしている。ちなみに、AB級動作のパワーアンプの効率は40%以上に達するという。

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