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レイテンシを短縮、車内ビデオ伝送に使える1394 Automotiveを富士通が提案

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富士通マイクロエレクトロニクスは、ビデオストリームを伝送するのに適したIEEE1394インターフェース規格を自動車に応用することを提案、これを1394 Automotiveと呼び、そのコントローラチップMB88395をこのほどサンプル出荷し始めた。1394規格は当初の400Mbpsから今や3.2Gbpsまで標準化されており、今回は800Mbpsのデータレートで伝送できるチップである。カーエレに1394がどのようなインパクトを及ぼすか。

1394はアイソクロナス(isochronous)伝送を特徴とする高速データ伝送規格。アイソクロナスとはシンクロナス(同期)とは違い、ある一定の遅延(レイテンシ)には目をつぶるが、最初のパルスが現れると次からは遅延なく、高速のデータレートで次々とデータを伝送していくという動作を言う。シンクロナスは全く遅れることなく最初から一緒についていく動作を言い、距離のある伝送には向かない。アイソクロナス伝送はビデオストリームの伝送にぴったりだ。


1394 Automotive


今回、自動車に使うという提案は、1394のデータレートだけではなく、レイテンシもかつてよりも大きく縮まったことがその最大の理由。「現在、クルマに使われているビデオ伝送の多くは、映像1フレーム分だけ遅れているからそれよりはずっと早い」と富士通マイクロエレクトロニクス基盤商品事業本部自動車事業部ソリューション技術部 担当部長の川西末広氏はいう。映像1フレームは1/30秒だから33msと長い。今回の1394は数msしか遅れないため一ケタ速くなったことになる。だから、1394を自動車に使えると同社は判断した。

当初、狙う市場はリアシートインフォテインメント。DVDやBlu-rayビデオを楽しむだけではなく、バックモニターとして使うリアカメラや、横の死角になっている場所を映し出すサイドカメラ、もちろんフロントカメラなどとも接続し、映像を見ることができる。今回データレートを800Mbpsにまで高めたのは、2台のモニターにも同時にHD画像(720p)を伝送するため。

富士通は2007年7月にデータレート400MbpsのコントローラLSI製品を売り出したが、今回、ビデオストリームを1/3、1/4に圧縮伸長する技術を開発、さらにエンコード・デコード時間を2〜3msと縮めた。さらに内部のラインメモリーだけでコーデック処理を行うため外部のバッファメモリーを不要にした。高速データを実現するため、前回の180nmプロセスから今回90nmプロセスへと微細化した。

1394規格を使えばシリアル伝送ができるため、自動車内のワイヤーを2本だけで引きまわせる。ワイヤーハーネスの重量が最大70%減ると見積もっている。自動車内のワイヤーハーネスはトータルで30kg程度あると言われているため、その重量が70%とまで行かなくても少しでも減ることは燃費向上の観点からも望ましい。同社自動車事業部長の独古康昭氏は、単なるインフォタインメントシステムだけではなく、車内のネットワークすべてを1394でつないでいきたいとしている。安全に関わる視界補助システムにも十分使えるとみており、1394規格は車内ネットワークの中心になりうるとしている。

これまでの自動車用ネットワーク規格には128KbpsのLINや1MbpsのCAN、さらに100MbpsまでのFlexRayなどの規格がある。情報系ネットワークではオーディオでのMOST規格が欧州にあるが、150Mbps程度ではビデオ伝送はもはや難しくなっている。
これまでの規格をビデオ伝送するような安全対策、視界補助などに使うのには速度が遅すぎる。富士通はこれらの規格に対応するマイコンチップを出してはいるが、今回の1394規格の提案で、情報ネットワークだけではなく制御ネットワークにも1394を使えば、ワイヤーハーネスの軽量化、すなわち低燃費化に寄与するとしている。また、ビデオやグラフィックス表示はダッシュボードにも使うという応用もあり、従来のメカニカルなメーターに代わってグラフィックスの応用にも1394を使っていく。


車内ネットワーク動向


MB88395のサンプル価格は1700円。ホンダがMB88395を評価する予定だという。


(2009/04/24 セミコンポータル編集室)

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