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国内ベンチャーが光を100%近く有効利用できる光学顕微鏡を開発、鮮明画像を公開

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ハーフミラーもスプリッタも全く使わない新型光学式顕微鏡が液晶産業で活躍している。光の全反射を利用できるため、これまでの光学顕微鏡では見づらかったガラスやプラスチック表面のキズや欠陥を大きく浮き出たせるようにその鮮明な画像を見ることができる。千葉県柏市にあるベンチャー企業エムテック社が、この全反射方式の光学顕微鏡を開発、液晶産業、半導体産業、金型産業などにこの顕微鏡を提供してきた。

これまでの光学顕微鏡との比較写真など従来見えなかった、あるいは見にくかった写真画像をこのほど公開した。さらに立体物の3次元観測もできるような光源の工夫も進めている。

この顕微鏡は、ある液晶メーカーから依頼を受けて、透明電極ITO(Indium Tin Oxide)を何とか顕微鏡で見ることはできないものか、という相談から始まった。透明電極は従来の光学顕微鏡でも実体顕微鏡、SEM(走査型電子顕微鏡)でも見ることができない。ITOパターンの描画状況を目視で確認できない。パターンの一部が細くなっている場合、電気的にはつながっているため初期的には正常動作をするが、その部分だけ電流密度が上がり、その結果、信頼性の問題が発生する恐れがある。パターンを目視できれば異常なパターンをすぐ見つけることができる。


左の従来の顕微鏡では見えなかった液晶の透明電極がくっきり見える(右が新型顕微鏡)
左の従来の顕微鏡では見えなかった液晶の透明電極がくっきり見える(右が新型顕微鏡)


開発したエムテックの代表取締役 中井興四郎氏は、液晶メーカーの要求を実現するため光を上から照射し、わずか斜めから光の反射を検出しようと考えた。実際に像を観察して見ると鉛直線に対して4°傾けるだけなら像の歪は0.25%しか生じないことがわかった。この程度なら十分に観察できると考え、鉛直線に対して3〜4°斜めから光を射れ、CCD光検出器で反射光を検出する。その結果、従来の実体顕微鏡(左)では見えなかった透明電極のパターンが右側の新型顕微鏡でははっきり見える。光源には白色LEDを8個使い、平面に並べた。LED1個当たりの電流は35mA程度であるためほとんど発熱しない。


従来の顕微鏡(左)では光は横からハーフミラーを通り試料からの反射を見るため明るさが減少。新型顕微鏡(右)は微小ながら角度を持つため像が歪むが光はほぼ100%生かせる。
従来の顕微鏡(左)では光は横からハーフミラーを通り試料からの反射を見るため明るさが減少。新型顕微鏡(右)は微小ながら角度を持つため像が歪むが光はほぼ100%生かせる。


この顕微鏡を開発し、初めて商品化したのは2000年。以来、少しずつではあるが、半導体メーカーや液晶メーカーに入り込みつつある。しかし十分ではない。このほどさまざまな写真を従来の顕微鏡と比較し、公開した。


ICチップを観察。左は従来の顕微鏡、右が新型顕微鏡の写真
ICチップを観察。左は従来の顕微鏡、右が新型顕微鏡の写真


従来の顕微鏡(左)ではICチップ表面の汚れが見えにくいが、新型顕微鏡(右)ではくっきりと見える。配線上の異物も識別できる。

鏡筒を試料から90mm以上、離して見ているため焦点深度が深く、同じ倍率でもくっきり見えるという特長がある。もちろん、より立体的な像を見るのに適しているとしている。まだ観察例はないが、チップを3次元実装するため貫通電極を形成する場合、貫通孔の上から下まで100μm以内ならはっきりと見えるはずだと、中井氏は言う。

エムテックはさらに立体物の観察も可能な顕微鏡も開発している。これは円弧型の光源を作り、白色LEDを数10個、円弧面に沿って並べたもので、細い注射針や軸などの表面の傷などを上から側面にかけて観察できる。即座に欠陥を見つけることができるため、欠陥検出時間が極めて短い。


立体物を即座に観察できる円弧方照明の最新型の顕微鏡
立体物を即座に観察できる円弧方照明の最新型の顕微鏡


今回の顕微鏡は、光源にLEDを使うため、バイオテクノロジーなどの細胞の観察にも向くという。従来の白熱ランプを用いた顕微鏡では、光を当てると細胞は即座に逃げてしまうため、観察が難しいといわれている。LEDはたとえ大電流を流して発熱させても熱をチップの裏側から逃がすことができる。白熱灯とは違い、光と同じ方向に熱も行くことはない。この顕微鏡に関する問い合わせ先は、(有)アゴラ社(agora_ni@ybb.ne.jp、電話0256-35-6310)が受け持つ。


(2009/05/11 セミコンポータル編集室)

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