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クロックジェネレータまで搭載した厚さ0.75mmのMEMS発振器

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米SiTime(サイタイム)社は、LSIパッケージに封止した厚さ0.75mmと薄いシリコンのMEMS発振器を開発、サンプル出荷中である。2008年1月には量産する予定。携帯電話に使われる部品の中で最も厚いものは今や、水晶振動子だけになってしまった、とサイタイム社カントリーマネージャーの櫻井俊二氏はいう。

デジタル回路で使う場合には、水晶振動子の発振周波数をてい倍して数十〜数百MHzの固定クロックパルスを発生しなければならない。てい倍にはPLL(位相ロックループ)を使うことが多い。このため、水晶振動子+PLL+クロックジェネレータを搭載しなければデジタル回路には使えない。

パッケージに封止された水晶振動子には最近、かなり薄いものまで現れた。例えば京セラや大真空には厚さ0.4mmという新製品がある。厚さ1mmを切る水晶振動子は続々市場に登場している。これに対して、シリコンのMEMS振動子をICパッケージに封止したものは0.37mmという製品SiT8002UTがある。しかし、SiMEMS振動子のメリットはシリコン半導体回路を一緒に実装あるいは1チップに集積できるという点にある。PLL・クロックジェネレータICに重ねて実装すると面積、厚さの点でSiMEMSの方が小さく、薄くできる。

MEMSによるSi振動子部分の厚さは加工しているウェーハと同じ0.14mmまで薄く削ることができる。この振動子は、ポリシリコンでカバーされ、内部を真空に引かれているため、このままでも使えそうだ。SiのPLLやクロックジェネレータも0.14mmに薄くし、Si同士を重ねれば間の絶縁材料を含めても少なくとも1mm未満にはできそうだ。SiTime社が量産中の発振子込みのクロックジェネレータは2.5mm×2.0mm×0.8mm(厚さ)だが、サンプル出荷中のSiT8102は厚さ0.75mmしかない。

PLLやクロックジェネレータなどの回路も1パッケージに入れていることは、SiのMEMS振動子のいろいろな電気的特性を補正できるという意味でもある。まず温度特性は比較的温度依存性の少ない水晶振動子よりもさらに少なく設計できる。というのは、MEMS振動子の温度特性は、温度の上昇とともに周波数はほぼリニアに下がるという曲線を描くため。リニアリティの補正は、ノンリニアな部分も含めて3次方程式でほぼ近似できるため、簡単な回路ですむ。加えて、位相の揺らぎともいうべきジッターにも補正をかけて5ps未満と極めて少ない。

この結果、サンプル出荷中のSiT8102の主な特性は次のようになっている。標準的なパッケージに収納でき、寸法は2.5×2.0×0.75mm、3.2×2.5×0.75mm、5.0×3.2×0.75mmの3種類ある。PLLで周波数をプログラムでき、調整可能な周波数は1MHzから200MHzまで、電源電圧は1.8Vあるいは2.5V、3.3Vから選択可能。温度変化は-40℃〜85℃で±50ppmである。

SiTimeはモノリシックの1チップ上にCMOS回路と振動子を集積したチップも試作している。MEMSのメカ部分とCMOS回路を分離するための幅を持たせているが、どこまで接近させることができるか検討中である。

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