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洗浄装置メーカーSESの民事再生法適用で考える半導体産業への融資

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とうとう恐れていた事態が起きた。1月17日土曜日の日本経済新聞によると、半導体洗浄装置メーカーのSESが負債142億円を抱えて民事再生法の適用を申請、受理された。半導体製造装置の受注が10月以降、急減、金融機関が資金を融資しなくなったため、資金繰りに行き詰ったと報道されている。まともなモノづくり製造業が金融機関の失敗の尻ぬぐいをさせられたという格好で、極めて残念だ。

半導体は、決して斜陽産業ではない。長期的にも5~8%で伸びてゆく成長産業である。金融機関よ、ちょっと待って考えてほしい、なぜ半導体産業に資金を融資してくれないのか。成長産業に融資すれば銀行も一緒に成長できるではないか。なぜつぶしてしまうのか。誰に聞いても金融機関はいまや全くお金を貸さないという。成長産業を見る目を本当に持っているのだろうか。

ただし、半導体製造装置産業は2000年までの10%を超すような高い成長の時代とは違い、微細化だけの半導体産業から微細化も技術の一つという産業への変革期にあるため、微細化が牽引していた製造装置産業の成長も鈍化している。装置メーカーは、半導体製造装置だけを設計生産しているわけにはいかなくなっている。太陽電池やMEMSなどへの拡大、材料分野への参入・拡大など、製品のポートフォリオを広げていかなければならなくなっている。

太陽電池はLSIほどの品質は持っていなくとも安いという特性を生かしたフォトダイオードであるから、半導体技術をそのまま転用できるビジネスである。今後は薄膜のアモルファスシリコンを使った太陽電池が注目されているが、太陽電池を量産する上で最も重要な要素が大面積・均一な特性である。薄膜のアモルファスシリコンを大面積で均一に作る技術は、液晶のフラットパネルディスプレイ技術が先行開発してくれた。このフラットパネルディスプレイ技術を転用すれば薄膜太陽電池の製造は明るい。

材料分野は、実は2008年もマイナスに沈まなかった。2009年さえ、横ばいかわずかなマイナスにしか沈まない。材料は半導体や太陽電池などのメーカーも、それらの装置メーカーも使ってくれるから市場が大きいのである。だから材料分野へのシフトも成長のシナリオが描ける。

一方で、半導体デバイスは複雑になる一方であるから、その複雑さを軽減する技術の分野に新たなビジネスチャンスがある。例えば、デバイスの設計とはいってもRTLまでの論理設計と、マスク出力までの物理設計がともに複雑になってくるため、物理設計だけを受け持つというビジネスが出てきている。配線ツールに伝送路の中継器を搭載して、配線遅延を防ぎシグナルインテグリティを上げる設計ツールを開発する企業も現れた。3次元ICのインターポーザの再配線設計を受け持つビジネスも間もなく出てくる。このように半導体の新たなビジネス分野が次々と登場しているのである。だから半導体産業の成長率は今後も平均5%以上が見込まれている。

半導体を中心としたビジネスチャンスは本当に広がっている。だからこそ、金融機関が目を覚まし、半導体という成長分野へ融資してくれることを願う。SESの轍を踏まないことを望む。

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