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シャープが中国市場に携帯電話を売り込む、勝算は?

3月14日にシャープが携帯電話で中国市場へ進出するというニュースがあった。これまで、NECや松下電器産業などが撤退し、京セラも撤退を決めた矢先にシャープが進出を決めた。これまで日本勢の失敗は高機能な日本の携帯電話を持っていった点である。中国市場で成功している電話機メーカーの機種はすべて電話のみの機能が多い。せいぜいカメラ付きどまりだ。要は低機能の電話しか売れていないのである。というのは、中国では日本と違って携帯電話のインセンティブはなく、消費者は1台7~8万円も出して低機能の電話を購入せざるをえないからだ。

携帯電話向け半導体チップの大手、米Texas Instruments社は中国・インド向けには機能を絞った1チップのベースバンドプロセッサを出しており、日本・韓国向けとは一線を画している。日本経済新聞のこの14日のニュースでは、「シャープは富裕層を顧客に想定しているもよう」と書かれているが、液晶テレビ機能を携帯電話の売り物にするだけなら、これまでの日本の携帯メーカーとなんら変わらない。

また、中国の地デジ携帯電話は、日本のワンセグとは違うテレビ規格であり、3G携帯規格も独自のTD-SCDMA方式である。携帯電話の機能を高くすればするほど日本の規格から離れてしまう傾向もある。しかも携帯テレビとなると中国での放送インフラ整備も欠かせない。富裕層を狙って製品を売ればいいだけの市場ではなく、放送インフラ、流通、規格研究など中国市場は問題がほかの市場よりも圧倒的に多い。

シャープはここにどのような勝算を持って中国市場へ挑むのか、おそらく中国の独自規格に関する何らかの情報を持っていて、携帯テレビが売れるとの確信があるに違いない。

3/12付けのニュースでもう一つ目を引いたものは、韓国のハイニックスが台湾のProMOSにDRAM技術を移転することに対して、技術が流出する、とサムスンが真っ向から反対しているニュースである。先々週の木曜日に、ハイニックスが54nmプロセスのDRAM技術をProMOSに提供すると発表していた。

サムスンの反対に対して、ハイニックスはProMOSとは3年間互いに健全なパートナーシップを進めてきたのであり、これからパートナー同士で一緒に生産ラインを使うとしているのだと平然と述べている。ProMOSは通信用の先端チップを生産している、と話している。

このサムスンのビジネスメンタリティは日本とよく似ている。一方のハイニックスはDRAMやフラッシュのメモリーメーカーと通信チップメーカーの相互生産は相補関係にあり、お互いの良い面を学びとれるとみているわけだ。コラボレーションをする場合の最も大事なことだが、同じ製品を作っていない競合企業ではない必要がある。さもないと、一方が他方を必ず食いつくしてしまう。銀行同士の提携や、似たような製品企業の提携は決まって、いずれ一方が相手をつぶしてしまっていた。

最後に、今年の設備投資に関して、日刊工業新聞が半導体メーカー主要11社の設備投資額は1割減の8400億円という記事があったが、今年の設備投資は昨年と比べてこの程度だと思う。TSMCやUMCも昨年よりも1割程度削減すると話している。世界全体でもやはり1割程度減少すると見るのは妥当ではないかと思う。


分析:津田建二

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