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富士通、半導体分社化のビッグニュース

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先週(1月15日~18日)のニュースの最大の目玉は、アップル社の厚さ4mmという超薄型パソコンであり、MacWorldの話題をさらったといわれている。このニュースを解説する前に、ビッグニュースが先週の土曜日に飛び込んできて、21日朝、プレスリリースを発表した富士通の半導体ビジネスについて解説する。

20日の日経新聞によると、富士通は今春をメドに半導体事業を分社化するという。同社の半導体事業は、2007年3月期における富士通全体の連結売上高の1割に当たる4700億円。2007年度の上期(2007年4~9月)は数十億円の営業赤字だったと日経新聞は伝えている。

21日付のプレスリリースでは、LSI事業を強化するため、と書かれている。さらに、「(分社化により)、スピーディーかつ柔軟な事業展開をこれまで以上に推し進め、ASIC事業に加えASSP事業への注力をさらに加速・発展させてまいります」としている。このプレスリリースを読む限り、ASICとASSPに集中していくと読める。

90nm以降の先端プロセス開発部門は、200mm試作ラインのある、あきる野から300mmラインの三重工場へと移管する予定だ。これにより45nm世代以降のプロセス技術開発のスピードを上げるとしている。あきる野テクノロジセンターは今後も活用するとしているが、どのように何を活用するかについては触れていない。

ここまでの発表を見ている限り、IDM(垂直統合メーカー)としてのビジネスを推進してきてこれからも続けるように見える。富士通は、ASICとASSP事業に注力してきた結果、設計開発力、ソフトウエア開発力を強みとする事業基盤を確立しているとしているが、むしろ設計開発力が強ければファウンドリ事業を強化できる。

ファウンドリ事業は製造だけ知っていればよいというビジネスでは決してない。顧客の慣れ親しんだ設計ツールを使ってシリコンに焼き付けるビジネスであるからこそ、設計力があればシリコンに焼き付けて、「1発完動」が可能になる。逆に、設計力のないファウンドリ事業はビジネス的にはありえない。TSMCやUMCが強いのは設計力とシリコンで動作できることを保証(silicon proven)しているからこそ、顧客は安心してTSMCやUMCに依頼する。

富士通は、DFMによりマスク補正を行い、「1発完動」をアピールしてきた。この実力はファウンドリビジネスに向いている。特に、DFMとして物理層の設計力やアナログ的な回路設計力はファウンドリに欠かせない。富士通はこれまで米Lattice Semiconductor社とファウンドリ契約をしてきたという実績がある。しかし、ファウンドリ事業に大きな力を注いできたとはいえない。

ASICやASSPは、顧客対応力とマーケティング力が必要となり、設計力だけで売り上げを伸ばすことは難しい。もし、IDMとして、ASICやASSPにさらに注力するなら、微細化への強化よりもマーケティング力強化のためのエンジニアの確保が最大の課題となる。技術者不足のこの折、優秀な人材をどのようにしてリクルーティングするのか、アナログも含めた設計力をどうやって鍛えるのか、経営者の手腕が試される。

やはり、アップルの超薄型パソコンMacBookAirにも触れておこう。このパソコンは最も薄い部分が4mmしかない。薄くするためにDVDドライブはなく、液晶のバックライトには白色LEDを使っている。また飛行機内での使用を想定して、キーボードが光りキーの押し間違いを減らしている。MicroDVIのビデオインターフェースやUSBポートなどのコネクタはふたが開いて現れるような構造になっている。ちょうど飛行機の荷物棚のように普段は閉まっていて薄いが、開けると広い棚が出てくるようにコネクタジャックが斜めに出てくる。

ハード的にもっともユニークな部分は、トラックパッドである。iPhoneのスクリーンと同様、親指と人差し指で開くと画面が拡大、閉じると縮小する。3本指を使うとスライドショーとして写真などの画面を次々と変えることができる。文字通り、指をポインティングデバイスとして使う。

RAMは2Gバイト、HDDは1.8インチ80Gバイトを内蔵している。マイクもカメラも搭載されており、テレビ会議はもちろんできる。

ワイヤレス化が徹底しており、ソフトウエアをインストールするには、ほかのパソコンにCD-ROMソフトを入れ、Airパソコンのリモートディスクをクリックすると、Airにインストールされるという具合だ。802.11nのWiFiとBluetoothは標準装備だ。パソコンというより、アップル社創業者の一人、アラン・ケイ氏が目指していた、子供でも使える「メディア」に近づいている。


分析:津田建二

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