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シリコンバレーのベンチャーキャピタルの資金調達を解説

日本ではニュースになりにくい珍しい、ベンチャー企業への資金調達のニュースが1件あった。これを中心に紹介するが、その前に全体をさらっと眺める。

セミコンジャパンが近いせいか、半導体製造装置や製造や装置、検査装置などのニュースが増えている。東京エレクトロンがスループットの高い熱処理製膜装置TELINDY PLUS、ニコンがArF液浸リソグラフィ装置NSR-S610を出荷したというニュースや、後工程ではディスコが半導体チップを薄く削る装置の発表などがあった。

半導体製造装置のスループット(あるいはタクト時間を短縮)を上げることは大量生産向け装置にとっては必須の項目である。大量生産装置の主要な応用はメモリーだ。メモリー関連のニュースでは1GビットDDR2 DRAM新製品をハイニックスが発表していたが、2008年後半には量産するというニュースがあった。DRAMの過剰生産は2007年末には終わるというサムスン電子の見通しが発表されている。

一方、サムスンもハイニックスも脱メモリービジネスを再び叫び始めた。DRAM価格へのすさまじいプレッシャーで利益を確保することが難しくなってきたためである。サムスンは、モバイルPCやPDA向けのRFID読取装置の製品化を発表した。ハイニックスはCMOSイメージセンサーの韓国メーカーであるシリコンファイルテクノロジーズ社の株式の一部を取得、戦略的なパートナーとなった。

日本ではほとんどニュースにならないような、シリコンバレーのベンチャーへの第二回目の資金調達ニュースがあった。MEMSベースのタイマーを開発しているSilicon Clock社は、このほど第二回目の資金調達に成功した。調達金額は800万米ドル(約9億円)。

この状況を解説しよう。米国のベンチャーは、まず起業時に数百万円から数千万円の資金を調達する。このときに資金を提供するいろいろなエンジェルと呼ばれるベンチャーキャピタリスト(VC)がいる。起業時の資金調達からビジネスがうまく運びそうかどうかの判断をし、うまくいきそうなら、さらに資金を集め第2回目の資金調達ラウンドとなる。今回は第2回目だから見通しは高まったといえそうだ。

第1回の資金を提供したVCには、Charles River Ventures社とFormative Ventures社、Tallwood Venture Capital社がいるが、第2回目は新たにこれらのVCに加えLux Capital社も加わった。Lux社はMEMSやナノテクに注力する初期段階のVCである。同社のマネージングパートナーであるJosh Wolfe氏は取締役として参加する。同氏は、「Silicon Clocks社の画期的なMEMSベースのICチップは40億ドル市場のタイミング産業にピッタリの製品で、この分野では長い間イノベーションが起きていなかった」と絶賛する。

Silicon Clocks社のCEO(社長)であるRichard Miller氏は、「このような半導体に詳しい投資家たちが集まったVCによる投資を得たことは誇りに感じる」と企業の発展を夢見る。

実は米国でも日本と同様最近、ファンドによる企業買収が活発になっており、ファンドキャピタルとベンチャーキャピタル(VC)とは厳格に区別しており、ファンドキャピタルへの反感は日本以上に強いようだ。


分析:津田建二

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