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不況脱出後の世界をイメージする時期に突入、明るさが見え始める

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新型インフルエンザのニュースに振り回されたゴールデンウィークでは、4月27日の週から2週間、半導体産業が驚くようなビッグニュースはなかった。逆に、不況を喧伝するようなトピックスが少なくなってきていることがニュースだったのかもしれない。不況脱出をにらんだグリーンテクノロジーや、有機ELテレビでのアライアンス、不況下にもかかわらず最高益を計上した任天堂など、明るさが見えてきた。

先週末には東芝が2008年度の最終赤字が3400億円になったことから、5000億円の資本増強により自己資本比率を高める戦略を発表し、脱不況に向け体力を強化していく。5月9日の日本経済新聞には東芝を含め電機5社の赤字が1.5兆円にも上ることが伝えられている。多くのエレクトロニクスメーカーが2008年度赤字に陥ったことは予想通りでこれらのニュースは単なる確認にすぎない。

むしろ、リサイクル、リユース、リデュースの3Rや、再生可能なエネルギー利用、消費電力の削減推進などのグリーンテクノロジーにおいて着実な進歩がみられる。「削る、磨く、切る」を得意とするディスコは回収率が99.8%というダイシングソー専用の小型純水リサイクルシステムを開発した。特殊なフィルタを利用したものだが、極細繊維などの新しい材料テクノロジーやシステムの改良により、複数の装置が必要だったリサイクル装置の小型化を達成している。

住友精化がアルゴンガスのリサイクル技術を開発したというニュースは見逃せない。代表的な希ガスであるアルゴンは、地球上の限られた場所にしか存在しないと言われ、資源の枯渇が問題になっている材料だ。スパッタリングやプラズマプロセスには欠かせない極めて安定した不活性ガスである。2010年春をめどに実用化するとのことだが、大量に使われる今後の薄膜太陽電池の立ち上がりをにらみ大いに期待したい。

日立製作所が太陽光発電に参入するというニュースもあった。昭和シェル石油と提携して、昭和シェルのパネルと日立の電力制御技術を組み合わせるという。東芝はすでに太陽光発電に乗り出す旨を発表しており、遅ればせながらという感じではある。昭和シェルはCIS(銅・インジウム・セレンを主成分)材料を使った太陽電池を開発しており、そのホームページによると、変換効率は30cm×30cmの面積で14.3%だという。単結晶Siの17〜21%にはまだ及ばないが、効率がたとえSi結晶に追い付いたとしても本当に安くできるか、がカギを握る。Si結晶よりも安くできるはず、というセールスポイントで各社が開発している。

パナソニックと住友化学が高分子系の有機EL事業で提携するというニュースも実はグリーンテクノロジーの一環としてあると言えないこともない。というのはプラズマだけではなく液晶も消費電力が意外とまだ大きいからだ。プラズマは発光効率を上げることだが、液晶はバックライトの蛍光灯がどのようなコンテンツであろうと点灯しっぱなしであり、バックライトをLEDに替えない限り消費電力を下げられない。LEDならLED自身の低消費電力に加え、黒の画面なら明かりを消すというアダプティブ制御で消費電力を下げられるが、蛍光灯は短時間で点けたり消したりできない。しかし、LEDバックライトは液晶テレビの価格上昇につながるというデメリットもあり、有機ELテレビはそのコンペティタになりうる。パナソニックの狙いは最初から大型テレビを狙い、低消費電力をセールスポイントとする。一方の住友化学は、高分子有機ELの技術を英国のCDT(ケンブリッジ・ディスプレイ・テクノロジー)を買収することで手に入れた。

任天堂が発表した2008年度の連結決算は売上高1兆8386億円、純利益が過去最高の2790億円となった。国内では販売台数は減少したが、欧米ではWii、DSとも2ケタ伸びたことで成長した。海外売上比率は87.5%、と文字通りグローバル企業になった。これでも円高の影響を受け円高差損を生じたが、その差損などを除く営業利益は5552億円と素晴らしい数字を挙げた。

一方、IT関係では3.9G(世代)のLTE(long term evolution)通信に向けドコモ、KDDI、ソフトバンク、イー・モバイルの4社が3.9Gの携帯電話基地局開設を申請したことを総務省が発表した。LTEでは従来のCDMA技術を基本とせず、帯域が20MHzと広いOFDM技術を使う。これまでCDMAの本家であったQualcomm社がOFDM対応を迫られ、勢力図が変わる可能性があり、携帯電話産業は群雄割拠の時代に入る。4GもOFDM技術を基本にすると言われている。つまり、しっかりしたOFDM技術を持ち、かつしっかりしたビジネスモデルを打ち立てれば、日本のSoC半導体メーカーでもウィンテルになれる可能性がある。まさにビジネスチャンスだ。


(2009/05/11 セミコンポータル編集室)

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