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太陽電池パネルの国内市場に中国のサンテック、台湾のジンテックなどが参入

日本市場において太陽電池の熱い戦いが始まりそうだ。経済産業省が1990年代後半から始めた、太陽電池発電装置を導入する家庭に補助金を出し、さらに発電した電力を電力会社に売るというビジネスがしばらく途切れていたが、この1月から再開した。ここ2〜3年、日本の太陽電池パネル市場は毎年20%減で減少してきた。その補助金が打ち切られたからだ。再び補助金を家庭に出すことになり、太陽電池の日本市場が再び成長路線に切り替わりそうだ。こういったニュースが相次いでいる。

経済産業省のホームページから

出典:経済産業省のホームページから

先週の日本経済新聞や日経産業新聞は、海外勢の太陽光発電装置メーカーが国内市場に参入してきたことを伝えている。中国のサンテックはこれまでドイツを中心に太陽電池パネルを輸出してきたが、日本市場にもメリットが多いとして参入してきた。1月中旬から再開した補助金システムでは、kWあたりのシステム価格が70万円以下のものに対して、1kW当たり約7万円の補助金を出す。中国の太陽電池は国内製パネルよりも安価なため、この縛りは中国企業にとっての追い風となった。サンテックに続き、台湾のジンテックも日本企業に太陽電池のOEM供給を始めることになった。

かつて、日本の太陽電池メーカーは世界のトップを行っていた。特に日本市場に向けて補助金制度があったため、シャープや三洋電機、京セラなどが太陽電池の最先端を行っていた。しかし、2000年代の中ごろに補助金が打ち切られてからは、太陽電池ビジネスは下降線をたどっていった。しかし、ドイツやスペインなどが自国で補助金と電力の買い取り制度を導入してからは、日本のプレイヤーは脱落していった。今、世界のトップメーカーはドイツのQ-セル社である。中国のサンテックがこれに続くようになった。サンテック製品はほとんどすべて欧州向け。ジンテックも同様に欧州向けだという。

太陽電池そのものは、低価格のフォトダイオードであるから、いかに安く均一に作るか、が最大の課題。性能は二の次。いくら効率が高くても高価格・不均一なら勝負にならない。だからこそ、高性能を追求しない半導体フォトダイオードを作ることのできる企業が強い。中国や台湾、ドイツなど、高性能半導体を作ったことのない企業の方が有利。さらに大面積に渡って均一に作れなくてはスペックを満足できない。すなわち製造装置で決まる要素が強い。

そうなると日本の太陽電池メーカーよりもアジアのメーカーの方がより低価格で、しかも液晶パネル製造の経験を持つメーカーが多い。すなわち、太陽電池パネルをいかに安く、均一に作れるか、という視点で見ると日本メーカーは弱くなりつつある。しかし、太陽電池メーカーに納める製造装置となると、日本メーカーは圧倒的に強い。東京エレクトロンがスイスのエリソンソーラーと販売代理店契約を結んだとニュースは伝えている。太陽電池市場に出遅れていた東京エレクはようやくその足がかりをつかんだ。すでにアプライドマテリアルズやアルバックはソーラー向け製造装置に力を入れている。

製造装置メーカー以外も太陽電池市場に入れるチャンスは多い。例えば、三菱樹脂は太陽電池のパネルに敷くバックシート市場に参入したと、日刊工業新聞は伝えている。さらに太陽電池からの直流電流を交流に換えるためのDC-ACコンバータや、DC-DCコンバータ、それを動かすスイッチングデバイス、さらにそのパワー半導体をドライブするIC、制御用マイコンなど、さまざまな半導体チップが太陽電池市場に食い込める。

では、製造装置メーカーは太陽電池市場へシフトすべきか?答えはおそらく、太陽電池市場も加えていく、ということだろう。半導体デバイス向けの製造装置の未来が暗いという訳では必ずしもない。ここ1~2年はやや期待薄だという状況で、半導体がなくてはモノづくりはできなくなっているためいずれ時期が来れば再び立ち上がる。ただし、微細化しなくても半導体ビジネスはできることがはっきりしたため、微細化・大量生産というこれまでの方式とは違った装置も開発していくことが望まれるだろう。

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