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環境ビジネスへの投資や仕組み作りに関するニュースが相次ぐ年末年始

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2008/2009年の年末年始は、設備投資の凍結、リストラクチャリングといったネガティブな記事と、これからの環境ビジネスへの投資や仕組み作り、といったポジティブなニュースが混在していた。日本全体の製造業をけん引してきた自動車産業、中でもトヨタ自動車が2008年度(2009年3月期)見通しとして1500億円程度の赤字になると発表したことは最大のショックであった。2007年度には売上25兆円、利益2兆円というこの優良企業が赤字に転落するわけだから。日本経済新聞は「外需依存の日本に打撃」という見出しで解説を加えた。

しかし、こと半導体に限れば外需に対する依存性が少なく、円高による損失はトヨタほど大きくはない。日本のSoCメーカーは内需依存性が高く、むしろ海外売上を伸ばすように言われてきた。

昨今の円高による影響は世界的なビジネスの歪としても現れている。米調査会社のガートナーが昨年暮れに発表した2008年の世界半導体メーカーのランキングによると、NECエレクトロニクスが前年の12位から10位にランクインされている。これは、ドルベースでの数字であり、円ベースでは若干のマイナスだと見られているのに、ドルベースに直すとプラスになってしまうほど、円ドルレートが変わってしまったからである。ちなみに2007年のレートは、1ドル=117.76円、2008年では1ドル=105.92円と、10%も変わっているため、為替レートの影響が支配的になった。この結果、NECの売上はドルベースで5%アップし、10位にランクインしたという訳だ。だからこそ、ドルベースでマイナスと見積もられたルネサス、東芝はもっと厳しいかもしれない。

ネガティブな話題よりもポジティブな話題の方が未来を拓くことができる。特に大市場が見込まれるリチウムイオン電池や太陽電池を巡る話題が年末から年始にかけて見られた。まず東芝はリチウムイオン電池の工場を300億円かけて新潟県柏崎市に建設するというニュースが12月24日に流れ、当日の正式発表では独自に開発した「SCiB」と呼ぶリチウムイオン電池を2010年秋から生産する予定だとしている。1月5日には太陽光発電システム事業も拡大するため東芝の電力流通・産業システム社に「太陽光発電システム事業推進統括部」を1月1日付けで新設した、と発表した。

NECは、日産自動車とのリチウムイオン電池の増産計画を前倒しすると報道された。2011年以降、自動車用の電池を年20万台規模で量産するとしている。そのため、総額1000億円をかけて日欧米に新工場を建設する予定だという。トヨタはパナソニックともリチウムイオン電池の共同開発を進めており、ホンダはGSユアサコーポレーションと組む。自動車メーカーにとっては、これまで心臓部の役割を果たしてきた内燃エンジンにモーターがとって代わるため、モーターを動かすリチウムイオン電池にかける意気込みは文字通り社運をかけざるを得ない。逆にリチウムイオン電池を開発しない自動車メーカーがいるとすれば心臓部分を外から買うことになる。

12月26日付けの日経新聞によると、日立製作所の古河一夫社長はそのインタビュー記事の中で、「リチウムイオン電池を自動車だけではなく鉄道や建機などにも応用する」と述べている。コンビニエンスストアのローソンは、コンビニ店舗に充電スタンドを設け、一般の電気自動車のインフラとしてのビジネス拡大を狙い、自らも営業用に電気自動車を導入すると発表している。

太陽電池メーカーとしてカネカは100億円強の設備投資を行い、薄膜系の生産能力を2010年夏までに150MWに拡大すると発表した。塗工機メーカーのヒラノテクシードは太陽電池向け真空成膜装置の生産能力を3倍に引き上げる計画を発表している。

半導体材料企業にも太陽電池ビジネスは魅力的だ。コバレントマテリアルズ社は太陽電池向け多結晶シリコン成長用のるつぼを外販すると同時に、インゴットの製造にも乗り出す。中国や韓国にその引き合いが強いとしている。

年が明けた1月2日の日経新聞の解説記事でも、オバマ次期大統領が表明していたグリーンニューディール政策を紹介、太陽光発電ビジネスの創出により300万人の雇用を生み出すことを伝えている。米国では、1930年代のルーズベルト大統領のニューディール政策や、アポロ計画による宇宙開発での主導権回復政策と似せて、環境ビジネスを経済不況克服と将来展望の開拓という両方を達成するカギになるとの見方をしているようだ。1月終りにオバマ次期大統領が、「大統領」として述べる一般教書演説に注目したい。

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