Semiconductor Portal

HOME » セミコンポータルによる分析 » 週間ニュース分析

不景気な話が多い中にも見えてくる一筋の光がさしている

先週は、重要低迷、マイナス幅、減収へ、再編、設備投資先送り、工場集約など、良い話が少なかった。米IT系の勝ち組にも影が見られるという見出しで今年の後半は売り上げが減少するという見込みをインテルが発表した。MID(モバイルインターネットデバイス)、UMPC(ウルトラモバイルPC)、ネットPCなど、いわゆる「5万円PC」のエンジンとなるAtomプロセッサの売れ行きが思いのほか、好調だったのにもかかわらず後半の見通しは暗い。そのような中にも新しい動きが垣間見られた。

ARMとオムロンにその動きが感じられた。まずARMは1~2年前から発表していたCortex−Mプロセッサシリーズを組み込んだマイコン(マイクロコントローラ)のソフトウエア開発を簡単にできる上、しかも互換性を持たせるためのソフトウエアインターフェースの標準化をユーザー、パートナーらと推進している。

このCMSIS(Cortex Microcontroller Software Interface Standard)は、半導体メーカーやミドルウエアメーカーのプロセッサにスムースに簡単につなげられる統一性のあるインターフェースであり、ソフトウエアの再利用が簡単にでき、新しいマイコンを開発期間が短くなる。今やソフトウエア作成が組み込み業界最大のテーマになってきている。すべてのCortexシリーズのプロセッサコアのソフトウエアインターフェースを共通にすれば、開発コストも安くなり、別の半導体ベンダーがCortexコアを内蔵したマイコンにもこれまで使っているソフトを移植できる。すなわち、半導体メーカーはきちんと差別化できる周辺回路を埋め込んだSoCチップの開発に集中できる。これまで時間をとられてきたマイコンのプログラミングの合わせ込みをする必要がない。

この動きは、ARMのCortex-Mプロセッサコアを使う各種の組み込みマイコンの開発が楽になるため、さまざまな応用に使われるようになる。ARMの狙いはまさにここにあり、これを組み込み系プロセッサコアのデファクトスタンダードにしようという目論見だ。組み込み系プロセッサコアでは、インテルのAtomも登場しているがここでARMが一歩リードしたと言ってもよい。

このパートナーには、AtmelやIAR Systems、Luminary Micro、Micrium、NXP Semiconductor、SEGGER、STMicroelectronicsが含まれている。

もう一つのひそかな動きが、エネルギーハーベスタと呼ばれるごく微小のエネルギーで動かすデバイス技術である。自然界にある太陽光のみならず、体温や人体の振動、工場や建物の振動などを利用して半導体チップを動かすのである。欧米で活発になってきている。バッテリーや商用電源を使わない自然エネルギー利用デバイスは究極のエコともいえる。

オムロンは、数10Hz以下という低周波の振動で10μWを発電するデバイスを開発した。動作原理は新聞報道だけではよくわからないが、どうやら圧電現象を使っているようだ。2cm角で厚さが8mmと小型で2年後をめどにサンプル出荷するという。

エネルギーハーベスタは、太陽電池のように自然の光を用いたり、35~36℃の体温と周囲温度の差を利用してペルチェ効果で電圧を発生させたりすることができる。振動を利用すると回転運動にも変換でき、電気エネルギーへの変換が容易になる。

無線システムと組み合わせると、電池要らずのセンサーネットワークやウェアラブルコンピュータなど将来への期待は大きい。

ご意見・ご感想