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ビッグニュースはパナソニックの三洋電機買収、製品ポートフォリオ拡大へ

日本経済新聞が土曜日に特ダネとして、パナソニックが三洋電機の買収に動いているという第一報を報じたが、翌日に具体的な株式市場からの調達をはじめとする詳細情報が流れた。買収金額はこれからのデューデリジェンスを経て正式に決まるようだ。もともとは松下電器産業の社員だった創業者が独立してパナソニックとは同じ製品をできるだけ出さない方針でやってきたはずだが、重複する製品も少なくない。

ただし、最終製品以外では、三洋の製品はパナソニックと同じものは今は少ない。パナソニックの1次電池に対して、三洋は2次電池、パナソニックのデジタルLSIに対して三洋はアナログICに定評がある。三洋電機は太陽電池ビジネスも強い。太陽電池ビジネスは、現在は補助金を当てにする、まだ脆弱なビジネスではあるが、欧州がドイツからスペインやイタリアへ広がり、米国も2050年までのロードマップも描くなど、これから成長が期待されるビジネスである。パナソニックは太陽電池事業も手に入れられる。

こういった補完型のM&Aは未来図を描きやすい。国内の半導体ビジネスは、ある時はDRAMに、別の時はSoCにみんな一斉に同じ向きに走ってきた傾向がある。これでは補完関係は構築できない。それぞれの企業がそれぞれの得意分野に集中するビジネスモデルだと、互いにガチンコでぶつかり合うことが少ないうえ、お互いに将来計画を話し合い、成長路線を描きやすい。話し合うことで情報量は圧倒的に増える。こういった企業同士だとM&Aでも前向きにM&Aができる。

かつて米テキサス・インスツルメンツ社(TI)は、DRAMビジネスを捨て、DSPとアナログ、標準ロジックだけに特化することを決断した後、アナログ企業をいくつか買収した。買収した企業はすべてTIにはないものを持っている企業ばかりだ。バーブラウン社は高精度なアナログアンプなどで定評があったうえ、チップコン社は低消費電力のRFチップの企業だった。自社にはない企業を買うことで、自社の製品ポートフォリオを広げ、買収する企業の持っている顧客も加わり、相乗効果(1+1>2)を生む。しかし、似たような製品の企業同士の合併あるいは買収だと、強い方の会社が弱い会社を追い出してしまうことにつながりかねない。大企業同士の合併や買収では追い出された会社(人)の話をよく耳にする。

今回のパナソニックの三洋電機に対する買収は、パナソニックの弱いところを補うという意味で成長できる方向ではある。問題は、発展途上国や中南米でブランド力の高い三洋ブランドをどう使いどう生かしていくか、三洋電機の従業員のモチベーションを下げずにかつ、パナソニックの社員と対等に仕事をしていく環境を作り出せるか、ということだろう。せっかく合併しても買収される企業の従業員のやる気が失われるような方向だと相乗効果どころが、生産性にネガティブフィードバックがかかり1+1<1.5程度に落ちてしまう危険もある。パナソニック側の経営手腕が試される。

10月末の週は、電機各社の4~9月期決算が発表された。残念ながら減益あるいは赤字になる企業が多かった。これまで好調だった電子部品メーカーの京セラ、TDK、ムラタは赤字には転落しなかったものの、減益になった。半導体メーカーは東芝とNECエレクトロニクスが赤字を計上した。ルネサスはまだ発表していない。ロームは減益にとどまった。製造装置業界も厳しい。ディスコや東京エレクトロンは減益だったが、アドバンテストが赤字になった。

それでも4~9月の市況はまだましだった。むしろ10~3月の方が問題で、誰に聞いても下期の明るい材料が全く見られない。すでにその兆候が現れており、半導体各社は7~9月期の工場稼働率が、4?6月期よりも下がっており、70%台に落ちているというニュースも流れている。

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