サスムンのサンディスク買収に対抗、東芝が共同工場の半分について買収交渉
サムスンがサンディスクを買収するという動きに対して東芝が対抗策を打ち出したようだ。東芝四日市工場内にある東芝とサンディスクとの共同の生産ラインのうち、サンディスクが所有する製造装置の半分を購入するというニュースを日本経済新聞が報道した。東芝はNANDフラッシュを生産し始めてからサンディスクと提携関係を結んできた。以来、提携を強化し、東芝の四日市工場を共同運営するという蜜月関係でやってきた。にもかかわらずサムスンが突然、サンディスクに対して買収提案を行ったことがことの発端だ。
サンディスクは買収提案を断ったが、サムスンがこれで簡単に引き下がるわけではない。というのは買収金額があまりにも低すぎたからだ。株価が最低に落ちた時の2倍という価格を提示したが、これとて最高値には届かない。誰が見ても安すぎるという提案であった。サムスンは資金力にものを言わせて、買収金額の是正に動いているだろう。東芝としては安穏としていられない。
東芝がサンディスクを買収してしまえば東芝の危機は救われるのだが、なにせ今期NANDフラッシュ価格の低迷が続き、4-9月の半期で500億円の赤字になった模様だと日経新聞は伝えている。資金調達が最大の課題であるが、東芝はアセットマネージメント手法によって資金不足を補おうとしているようだ。日経新聞によると6月末時点での現預金は3000億円弱だというから、サンディスクの装置を千数百億円でそのまま買うのはキャッシュが減ってしまうためにリスクが大きい。
そこでキャッシュを減らさず、装置を自分のものに移転させる方法としてアセットマネージメントを検討しているようだ。どこのアセットマネージメント会社を使うのは明らかではないが、東芝はまずそのアセットマネージメント会社を通じて、サンディスクの製造装置を買い、それをアセットマネージメント会社に売ってしまう。東芝はそのアセットマネージメント会社から装置をリースで借りるという訳だ。使う装置は東芝の資産ではないため、キャッシュフローとしては楽になる。もちろん、毎月のリース料が決して安い訳ではないが、固定資産税はかからないうえにリース料は必要経費として認められるため、節税対策にもなる。
日本IBMが川崎に自社ビルを建てた時もそのビルを建設後、即座に売却しリースで毎月借りていると言われている。このように無理にアセット(資産)を持たない経営手法も半導体ビジネスには必要だろう。すべて資産として持つなら、税金がかかる上、償却期間は少し前まで100%カウントされなかった。半導体ビジネスでは資産は土地や建物ではなくむしろ製造装置なのであるから、製造装置を土地や建物と同じような考えで運営し、自分の企業にとってベストな方法を選ぶようにしなければならない。
ただ、東芝にとってこれでサムスンのサンディスク買収を完全に防げるわけではない。サムスンの買収金額によってはサンディスクが話にのる可能性を否定できないからだ。サンディスクの四日市工場が東芝と共同であるから、その工場を残して残りをすべてサムスンが買収するという手もある。サンディスクの知的財産権がどうなっているか、それをどう配分するか、ここがおそらくこれからの買収戦争のカギを握ることになろう。