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東芝が太陽電池ビジネスに参入するのはごく自然のなりゆき

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電力やエネルギー、そして半導体をコアコンピタンスとする東芝が、予想通り太陽電池に進出するというニュースが先週流れた。これまで、同じ半導体を使う太陽電池のビジネスなのに、シャープや三洋電機、三菱電機、京セラといった半導体ビジネスでは大手とはいえないグループがリードしてきた。この分野に半導体売上世界第3位の東芝が参入する。

しかし、東芝は太陽電池のセルとなる半導体部分は生産しない。米国の中堅半導体メーカーCypress Semiconductorの子会社であるSun Power社の単結晶シリコン太陽電池を供給してもらい、東芝が組み立てる。このアセンブリ作業では、太陽電池セル1個の出力がpn接合のバリア電圧である0.7V〜0.8Vしかないため、セルを120個以上直列接続して100V程度まで高めていく。電流容量を稼ぐためにはこれを並列接続する。さらに直流を交流に変換し、生じた電力を交流100Vの架線に戻すためのインバータが必要になる。

実は東芝は単なる太陽電池パネルのアセンブリ会社ではなく、インバータなど電力半導体や電力効率を上げたり、力率改善したりするなどパワー回路でのノウハウを持つ電力企業である。ここに東芝のコア技術が生きてくるわけだが、いずれ太陽電池の半導体セルにも進出するだろう。半導体の知識を生かさないわけがないからだ。太陽電池は動作原理が半導体のフォトダイオードと同じだが、大面積基板に作る製造技術はフラットパネルディスプレイ技術に似ている。東芝は半導体技術と大面積均一製造技術の両方を持つ。使用するSun Power製の単結晶シリコン製品は効率が21.5%と群を抜いて高い。太陽電池の効率が高いということは小さな面積のモジュールでも電力を作り出せるということで、セルだけのコストでみると単結晶シリコンは高いが、組み立ても含めたモジュール全体のコストで見ると、案外安いかもしれない。

だが、セルのコストが無視できなくなるころには、アモルファスシリコン薄膜の太陽電池へと向かうだろう。ただし、効率は10%以下とぐっと落ちるが、そのころまでには大面積で効率を落とさない技術も開発されるようになっているだろう。

太陽電池技術は、半導体プロセス技術と大面積均一な製造技術を持つ企業が乗り出すのには最適な有望ビジネスだといえる。2年前、Cypress社のCEOである、T. J. Rodgers氏にインタビューしたとき、効率の高い太陽電池を作れるのは自分がシリコンガイだからさ、と答えている。シリコンの性能を上げることに関してはLSIであろうと太陽電池であろうとプロだという意味である。

同じ週の7月18日のニュースでは、Sun Powerがフロリダ州の2ヵ所で6000世帯分に相当する出力35MWの太陽光発電所を建設すると報道している。まさに太陽電池セルの技術から発電所へとビジネスを拡大している。

もう一つ見逃せないニュースとして、メモリーメーカー世界第2位の韓国Hynixがファウンドリも始めるというニュースだ。Hynixは、韓国のファブレス半導体メーカーのC&S Technologyの株式を5%取得(450万米ドル相当)し、カーエレクトロニクス向けのチップを製造する。C&S社は放送・通信向け半導体チップの設計が得意なファブレス企業。

HynixはDRAMトップのSamsungと共同でMRAMチップを開発するという、韓国大手メーカー同士の共同開発という珍しいニュースを6月30日付けのニュース解説で取り上げたが、今回のHynixがファウンドリビジネスを強化することに対して、Samsungは快く思っていないようだ。早くも不協和音が流れ始めている。

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