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ケイデンスがメンターを買収すると提案、メンターは拒否

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先週のビッグニュースは、ケイデンスのメンター買収提案だろう。LSI設計・検証の世界のビッグスリーであるケイデンスデザインシステムズ、メンターグラフィックス、シノプシスの中の2社が買収合併という提案である。買収内容は、ケイデンスがメンターを16億ドルで買うというもの。この金額はケイデンスの昨年の売り上げと同額。セミコンポータルでは経済紙による日本語ニュースでもNewsEdgeの英文ニュースでも採り上げている。

ケイデンスはLSI設計に強く、メンターはPCB設計に強いというイメージはあるものの、はっきりしたものではなく、両社ともLSI設計のトップ企業である。このため同業種同士の買収・合併には、なぜ?と疑問を抱かざるを得ない。ケイデンスはメンターを吸収合併することで製品のポートフォーリオが広がるとしている。

ケイデンスは、CEOであるMichael Fister氏が、メンターのCEOであるWalden Rhines氏にあてた手紙を公開し、メンターが興味を示さないことに不満を募らせている。今のところメンター側は拒否している。


ケイデンスのFister氏/メンターのRhines氏


ユーザーの視点から見れば買収が正しいかどうかわからない。6月8日から開かれたDAC(Design Automation Conference)において、ファウンドリのTSMC、UMCなどはいずれもケイデンス、メンター両方のツールを揃え、幅広いユーザーに対応できることを訴えている。もし合併が成立すると、これまで一方のツールでしか設計したことのないユーザーは不安に駆られるに違いない。いつ過去のツールが使えなくなるかもしれないからだ。

先日のDACではこの買収提案のうわさのレベルの話でさえ聞かなかったため、全く寝耳に水という感じだ。少なくともトップスリーのうちの2社が一つになるのは、独占禁止法との兼ね合いもあり今後の対応を見守りたい。ただし、ビッグスリーの独占に最近急速に割って入りこみつつある企業がある。マグマデザインオートメーションだ。マグマがより複雑な半導体ICの論理設計と物理設計をつなぎ、さらにプロセスマスクとも密接に関係するDFM、アナログデジタルミクストシグナルICなどの設計・検証ツールなどを得意として急伸してくる様は、EDA産業の新たな再編のシグナルかもしれない。

もうひとつ大きな動きは、太陽光発電である。これも先週のニュースの日本語、英語ともに掲載された大きな動きが、インテル社が太陽電池を作るための新会社をスピンオフさせたというニュースである。太陽電池もまた半導体であり、半導体メーカーのサイプレス社も関連会社を持ち、ヒューレット-パッカード社は自社技術を新興企業にライセンスする。

来月始まる洞爺湖サミットを控え、世界的にCO2削減への取り組みに力を入れており太陽光発電への期待も大きい。ただ、この1~2年の急速な動きはドイツやスペインなど欧州で太陽光発電を促進するためにそれらの政府が一般家庭に補助金を出すことによる。一方の日本は、補助金をすでに打ち切っており、ここ2年連続で太陽光設置件数は2桁減少を続けてきた。中国でさえも太陽電池メーカーが日本を抜き去るようになり、米国を合わせて世界中で太陽光への関心が高まっている。

インテルからスピンオフする新会社の名前はスペクトラワット(SpectraWatt)社。初期投資額は5000万ドルで最大の出資者はIntel Capital社である。さらにゴールドマンサックスグループの100%小会社であるCogentrix Energy社と、PCG Clean Energy社、Technology Fund社、Solon社も出資している。2008年後半に工場建設に着工、2009年半ばに最初の製品を出荷する予定である。

昨日のニュースで、国内家庭用太陽電池が減り続けている現状に危機感を募らせた経済産業省は再び日本でも補助金を復活させるという内容をまとめた、と日経新聞が報じている。議会で法律を通しても2010年から施行されるということからやや遅きに逸した感がいがめない。太陽電池メーカーの諸外国、ドイツや中国、米国の勢いはあまりにも急速だからだ。


分析:津田建二

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