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ベンチャーが資金調達に成功したニュースが相次ぐ

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6月9日の週では、ベンチャーの起業に関する発表が2件あった。日本ではなかなかベンチャー企業が育ちにくいといわれるが、資金調達の仕組みとベンチャー企業が持つ、”どこにも負けない技術”が米国や世界の企業とは違うという側面も見逃せない。少なくとも米国や欧州のベンチャーが起業できるためには、”大企業に負けないすごい技術” を持つことが大きな特徴だ。

通信と自動車分野に強く、PowerPCアーキテクチャのマイクロプロセッサを持つFreescale Semiconductor社は、自社開発してきたMRAM(magnetoresistive RAM)製品および関連の磁気技術部門をEverSpin Technologies社として独立させた。独立するためにベンチャーキャピタル(VC)5社が出資した;New Venture Partners社、Sigma Partners社、Lux Capital社、Draper Fisher Jurvetson社、Epic Ventures社。新会社はMRAMに注力し、製品シリーズを広げていく。

不揮発性メモリーであるMRAMはこれまで、高速の書き換えやアクセスが可能で、信頼性の高いメモリーとして自動車に応用されてきている。自動車以外の市場を求め、新会社を設立したとされている。今、Freescale社では投資ファンドが大株主となり、一般株式市場から姿を消している。投資ファンドとベンチャーキャピタルの性格の違いからMRAMは独立したベンチャー企業のほうが資金調達しやすいとの判断があったのではないかと想像される。

インターネットテレビサービスの新ベンチャー企業であるVeoh Networks社は、第二回目の資金調達を達成した。これまでの6社のVCに加え、このほど新たにIntel CapitalとAbobe Systems社、Capital Research Global InvestorsのGordon Crawford氏から資金を得た。合計で3000万ドルになる。この資金を通じて、さらにビジュアル化を高め、先端的な映像を創出し、広告商品を広げ、サービスを拡張していくことに使うとしている。

これまでのインターネットテレビとは全く違い、画質の向上、エンターテインメントの質を高めているという。しかもPCでもテレビ受像機でも携帯電話や携帯機器など受信機は問わない。

ベンチャー企業が資金を調達できるということは、有望なベンチャーだから投資してくれるということにほかならない。第一回の資金調達は通常、数千万円程度だが、第二回は数十億円程度に跳ね上がる。さらに資金が必要な場合には出資企業を募ることになる。

ビデオ関係のチップの話題をもう一つ紹介する。NXP Semiconductorは、携帯電話などの機器で見られるテレビの出力を据え置き型の液晶テレビでも見られるように変換する半導体チップを発売した。このチップを携帯機器に搭載しておけば携帯電話の小さな画面を家庭のテレビで拡大して見ることができる。

半導体の微細化技術は、プロセス技術だけではなく設計手法にも大きな影響を与えている。TSMCは、IBMグループのコモンプラットフォーム手法に対抗して、UDFM(Unified Design for Manufacturing)アーキテクチャをチップメーカーに無料で使用可能にすることを発表した。TSMCが開発したシミュレータやDFMモデルなど32nmに向けた生産情報が詰まっている。具体的には共通のAPI上にシミュレータとDFMデータを含むDDK(DFM Design Kit)を提供し、32nmで設計するユーザーは暗号化したDDKをTSMCのサイトからダウンロードできる。

先週、ロサンゼルス郊外のアナハイムで開催されたDAC(Design Automation Conference)でも台湾のファウンドリUMC社がMentor Graphic社やSynopsys社、Cadence Design Systems社、Magma社とそれぞれ65nmプロセスの低消費電力デザインキットで提携したことを発表した。これも設計とプロセスのタイアップが欠かせなくなってきたことの表れでもある。


分析:津田建二

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