セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

新型メモリーの開発や通信チップの提携加速が目立った先週

|

先週あっと驚いたニュースは、富士通マイクロエレクトロニクス社の社長交代のニュースだった。ただし、前社長の辞任というような個人的な話はこのコラムでは触れない。ネットでは2チャンネルなど匿名性や無責任性を利用して個人を詮索する話がまま見られるが、見ていて気持ちの良いものでは決してない。富士通の新社長には半導体産業の盛り上がりに貢献していただくことを期待したい。それより、海外の動きが先週も活発だった。

海外では、新しいテクノロジーの開発が進んでいる。提携の動きも早い。新しいメモリー関係のニュースと通信用チップでの提携などが目についた。

新型メモリーでは、韓国ハイニックスがスピン利用のメモリーで米国ベンチャーGrandisと提携した。このメモリーはSTT(スピン転送トルク)-RAMと呼ぶ、新型RAMで、内部に印加する電圧はわずか1.2Vで動作する。ハイニックスはこの1月にサムスンとSTT-RAMの共同開発にサインしたばかり。2010年までにSTT-RAMの開発に90億ウォンを投資する。

不揮発性メモリーIPベンダーのインピンジが、アバゴテクノロジーズ社にAEON MTP(マルチタイムプログラミング)不揮発性メモリーをライセンス供与する。アバゴはヒューレット-パッカード社からスピンアウトした半導体メーカー。インピンジのメモリーIPはすでにさまざまなICに集積され、8億個の製造実績があるとしている。

ノべリックス社が1トランジスタセルのSRAM IPコアを開発、SoCメーカーやファブレスベンダーに販売していく。メモリーセル面積は50%小さくなり、リーク電流は1桁小さいとしている。プロセス的にはバルクCMOSで製造できるためSoCとのプロセス互換性はあるという。

通信チップの動向は目が離せない。シークワンスコミュニケーション社は、ベースステーションと加入者用の2.3GHzモバイルWiMAXリファレンスデザインに対して、WiMAX Forumの認定を得た。これにより同社は、モバイル、固定ともWiMAX認定を取得したことになる。プロトコル準拠や無線方式の準拠、相互運用性試験などを行った。

ソフトウエア無線のベースバンドチップのファブレスベンダーである英アイセラ社は、RF CMOSベンダーのSirific社を買収するという契約で合意した。このことで、アイセラはモバイルワイヤレス技術のチップセットをRFからベースバンドまで揃えることができる。

インドのウィプロテクノロジーズは、沖電気のシンガポールにあるRF・ベースバンドのデザインセンター会社、沖テクノセンターシンガポール社を買収することで合意した。沖テクノは日本の顧客向けにRFおよびベースバンドの無線チップを設計しており、ウィプロは日本市場へ参入しやすくなる。

DRAMの値下がりにまつわるニュースも多かった。エルピーダメモリが赤字に転落したというニュースのほか、エルピーダがメモリーモジュールメーカーとDRAMの価格を値上げすることで合意した、というニュース、さらには日本のエルピーダ、米国のマイクロン、ドイツのインフィニオン、韓国、台湾の複数のメーカーが台頭するDRAMビジネスで業界の再編を示唆する記事もある。薄型テレビ用のDRAMは4~6月は値段を据え置くことが決まったものの、値下げ要求は続いているというニュースもある。

エルピーダは3月24日のニュース解説で、ファウンドリビジネスを始めたことを採り上げたが、先週は早くもファウンドリ専門部署を設けたというニュースがあった。ファウンドリビジネスは、SoCやロジック関係のICチップを製造するビジネスであるから、導入した設備を効率良く活用できるというメリットはあり、安定経営につながる。

ただし、ファウンドリの顧客は待っていては来ない。こちらから積極的に売っていかなければ顧客はつかめない。このビジネスではファブレス企業、すなわち潜在的な顧客は山のようにあるが、取引の内容は高度に技術的である上、それをじっくり説明しなければならないからだ。売り込むためには顧客の使った設計ツールと同じものを揃える、シリコンで動作できることを確認ずみのIPコアを増やす、OPCツールを持つ、などをサポートするIC設計者も確保する必要がある。プロセス技術者だけでは顧客に対応できないからだ。

分析:津田建二

月別アーカイブ