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東芝の選択と集中;NANDフラッシュへの大きな投資

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先週は、半導体投資として東芝が岩手工場にNANDフラッシュメモリーのラインを作るために大規模な投資を行うというニュース(2/19)が最もインパクトが大きい。東芝の選択と集中は着実にしかも加速している。このニュースは、これまでの四日市工場だけでNANDフラッシュを生産してきたが、岩手にもラインを作る(2/20)ことで災害などの危険分散の意味がある。

需要が強いNANDフラッシュメモリーの生産能力を伸ばせば伸ばすほど、地震などの不慮の災害に対するリスクが高まる。岩手にも分散しておけば、いざというときにチップを確保できるという点でチップユーザーは安心して東芝のチップを使い続けることができる。ユーザーから見ると、サプライチェーンをしっかり確保する意味で行ってきた、マルチソースによる数社購買の必要はなくなる。一方で、東芝は安心して大量生産できるということになる。

NANDフラッシュメモリーの需要は加速する一方であるが、応用の一例としてサムスンが64MBのソリッドステートディスク(SSD)を量産し始めたというニュース(2/19)もあった。シングルビットセルのNANDフラッシュメモリーを使ったSSDだが、シリアルATA IIインターフェースに準拠しているという点も見逃せない。シリアルATA(SATA)はディスクドライブの規格であるが、ドライブとコンピュータを結ぶ配線の本数を減らすため、パラレルからシリアルに変えようという動きの一環である。SATA IIはSATA Iよりも60%高速の規格であるが、フラッシュを使うことでハードディスクに比べて数十%ではなく数倍という単位で高速にできる。このため高速しかも低消費電力を重視するハイエンドのノートパソコンから採用されていく。ここから次第に携帯型、ローエンドへとSSDの応用は間違いなく広がっていく。NANDフラッシュの需要はまだまだ足りない。

NANDフラッシュの一方で、NOR型フラッシュも堅実なビジネスができているようだ。32Mビット品の単価が大口取引で180〜200円だという(2/20)ことで、さほど値下がりはしていない。これに対してDRAMの単価は512Mビット品で0.9ドルまで値上がりしたというニュース(2/22)もある。512Mビットもの大容量を実現しても100円にも満たないビジネスをDRAMメーカーは強いられているのである。中国やインド市場向けのパソコン市場は大量に使われるだろうが、高集積化への展望はあまり期待できない。32ビットシステムでは容量的にはもう十分だからである。韓国のハイニックスがスポット市場への投入を開始したというニュース(2/19)もあり、DRAM価格は再度下がる恐れもある。

SATAに見られるように通信インターフェースの高速化は単なるハイエンドへの応用だけではない。上述したように配線本数を減らすために、低速ですんだパラレルから高速化しなければならないシリアルへと変わっている。イーサネットでも単なる高速化ではなく、いろいろな人(クライアント機器)が同時に使えば通信速度が遅くなるため、通信ネットワークはたくさんの人が使ってもスピードが落ちないようにしなければならない。このため高速化が要求されるのである。使う人が増えれば増えるほど、従来の10Mbpsから100Mbpsが普及しているが、1Gbpsも最近では使われ始めている。

さらにその上の高速化ということで、10Gbpsのイーサネット関連のニュースもあった。米国のAMCC(Applied Micro Circuit Corp)が物理層用チップを発表した(2/21)。三菱電機は10Gbpsの光伝送を行うためのレーザードライバを3月からサンプル出荷すると発表している(2/22)。これらの10Gbps伝送はオフィスなどの一般向けではなくまだ、メトロイーサーネット向けではあるが、いずれオフィスや民生用にも下りてくるだろう。さらに高速の40Gbpsの規格について、三菱電機やNECエレクトロニクスなどがSONET OC-768に準拠した光デバイスの共通仕様を公開したというニュースもあった(2/22)。


分析:津田建二

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