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次のキラーアプリは自社の得意分野に求めるIntel、TI

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次の応用(キラーアプリ)に向けた技術的な取り組みが次第に見えつつある。先週のニュースから米Intel社のポストPCと、米Texas Instruments社のポスト携帯電話を探る動きを紹介する。加えて、3次元積層技術の実用化切符を早く手に入れるために東京精密が開発体制を強化している。

モバイルPCでIntelのライバルはアームに
最近、米市場調査会社であるIn-Stat社がまとめたレポートによると、Intel、AMD、IBMの競争形態が少し変わり、今後ARMも加わると見ている。Intel社のCEOであるポール・オッテリーニ氏が定めるキラーアプリは、ウルトラモバイルPC(UMPC)およびモバイルインターネットデバイス(MID)、新興市場狙いのPCの三つである。特に前者2つの応用は、低消費電力化が欠かせないため、競合相手はARM社になってくる。

Intel社がMIDなどのモバイルインターネットコンピュータを推進していることとWiMAXを推進していることとはセットである。WiMAXは半径10kmあるいは50km程度で70Mbps程度のデータ伝送のできるネットワークシステム。WiFiの延長で通信距離を伸ばしただけともとれるが、RF技術としては複数のアンテナで受信状況を相補うダイバーシティアンテナや、OFDMのような高効率のデジタル変調技術などが必要となる。通信キャリヤが提供する3Gネットワークを使わずに独自にWiMAXネットワークをセルラーのように構築する必要があるが、3Gネットワークができていない海外ではWiMAXと3G構築とはほぼ同じ土俵に上がっているといえよう。

AMDはこれまでのIntelとまともに戦うのではなく、高性能を売り物にするスーパーコンピューティング技術へとシフトしたり、ATI買収による高性能なグラフィックスアクセラレータのような分野へと移っている。CPUなどのプロセッサに対して、APU(アクセラレーテッドプロセッシングユニット)と呼んでいる。

IBM社はPOWERプロセッサアーキテクチャをこれからも推進する。特にサーバーとゲーム機などの民生向けの応用である。3大ゲーム機、すなわち任天堂Wii、ソニーのプレイステーション、MicrosoftのXBoxはすべてIBMのPOWERアーキテクチャチップを使っている。ただし、In-Statは、IBMは製造コスト高、激しい競争、ビジネスモデルの変更などによって、10年以内に半導体ビジネスから手を引くと見ている。

新たにARM社がIntelのウルトラモバイルデバイスで競争激化を招くとみている。この調査レポート「Intel Competitor Line-up: Challenges to the industry Leader」の価格は1,995米ドル。


TIはOMAPの新応用を見い出す
米TI社は、携帯電話市場だけでなく、音楽プレイヤーや家庭用医療機器などに使えるチップを発表した。ワイヤレス市場で米Qualcomm社と激しい競争を繰り広げるTI社はDSPプロセッサにさまざまな機能を集積したOMAP製品の応用範囲を広げていく。OMAP3500はグラフィック機能を特長とし、ナビゲーションや医療画像装置、音楽プレイヤーなどに向くという。

CDMA通信方式で幅広い特許を持つQualcommは、2007年第1四半期にTIが得意としていたワイヤレス市場に参入し、米市場調査会社のiSuppliによると2007年末には308億ドルという携帯電話チップ市場の18.2%の市場シェアを獲得した。これに対してTIは16%シェアだったからQualcommに抜かれたことになる。

2Gまでの携帯電話では、CDMAのQualcommに対して、欧州などはGSM方式を採用していたためどちらかといえばQualcommは孤立していた。しかし、3G時代は、CDMAの延長である、CDMA1xさらにはCDMA1xEV-DOへと移行していくと同時に、GSMグループや日本のNTTドコモグループがW-CDMAを採用している。この方式もQualcommが基本特許を持つとしているため、どちらの方式でもQualcommに特許料を支払うことになる。Qualcommは3G通信の「マイクロソフト」にもはやなっている。

モバイルPCにせよ、携帯電話にせよ、鍵となる半導体は高密度実装であり、高集積化である。東京精密はチップを貫通電極でつなぎ合わせる3次元実装技術を強化する。3次元実装技術にはウェーハを25μmまで薄くすると新聞では伝えているが、薄ければ薄いほど貫通電極は形成しやすくなるが、反面割れやすく加工しにくい面も出てくる。電極形成前の洗浄、シリコンエッチング、電極メッキなどさまざまな形成技術が必要となる。

そこで、米ニューヨーク州アルバニーにあるSEMATECHの3次元配線プログラムに参加することを決めた。このアルバニー大学のCNSE(College of Nanoscale Science and Engineering)では、ウェーハの薄形化が得意な東京精密を歓迎するコメントを発表している。

分析:津田建二

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