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ルネサスの選択と集中、IBMの仮想化チップに注目

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1月28日の週は、2007年10-12月決算で、エルピーダをはじめDRAMメーカーがほとんどすべて赤字に転落したことを報告した。エルピーダはこの4半期に89億円の赤字を記録したが、台湾のDRAMメーカーは、力晶半導体、南亜科技、華亜科技、茂徳の4社ともすべて赤字だった。

2月2日土曜日の日本経済新聞にも韓国のハイニックス社が358億円の営業赤字に転落したことを報じている。要は、DRAMの単価が1ドルを割るような非常識な安さでは、どのメーカーも利益が出ないことを露呈した。DRAMの業界再編は世界レベルでのメーカー間の再編になることは間違いないだろう。

グローバル化の動きは、企業間の再編だけではなく協力も活発化している。台湾のDRAMメーカーの一つ、力晶半導体がベルギーの研究開発組織であるIMECのプログラムで32nmリソグラフィ技術を共同開発する。サムスン、ハイニックス、キマンダ、マイクロン、エルピーダといった大手DRAMメーカーはすでにIMECと共同開発プログラムに参加しているため、力晶半導体は遅ればせながらという感がいがめない。ミクストシグナル半導体メーカーの米AMI SemiconductorもIMECとスマートパワー半導体技術で共同開発する。半導体の共同開発計画にはもはや国境がなくなったといっても過言ではないだろう。

先週の個別の動きとしては2つ注目した。
一つは、ルネサス テクノロジの選択と集中が加速していることである。一つは、日経新聞に大きく報じられた、ルネサスの熊本工場を三菱電機にそっくり売却するという記事である。日立製作所と三菱電機の半導体部門が合併したルネサスから、三菱電機熊本製作所へ戻ることになる。ルネサスが液晶ドライバを力晶半導体へ生産委託するというニュースもあった。液晶ドライバは、ASICやSoCではなく、純然たるコモディティ商品。価格を下げることに価値のあるコモディティであるため、システムLSIあるいはSoCに集中するルネサスにとって、コモディティ商品をメモリーメーカーやファウンドリに委託することは当然のシナリオだったといえよう。

もう一つの大きな動きは、仮想化技術を実現するIBMの半導体チップ。仮想化(Virtualization) 技術は、1台の高性能なコンピュータを使いながら、まるで数台のコンピュータで別々のOSで動作するように見せかける新しい技術のことである。IBMは、新しいマイクロプロセッサチップPowerVM Expressを開発、このチップを使えば中小企業向けのサーバーにも仮想化技術を搭載できるようになる。サーバーを複数台使うことなく、いろいろなOSで動くコンピュータを1台で実現できるため、消費電力の大幅な削減、TCO(全運用コスト:total cost of ownership)も大きく減らせるとしている。IBMの見積もりでは消費電力は80%、TCOが72%削減できるという。このチップは、IBMのUNIXオペレーティングシステムであるAIXと、無償ソフトLINUX、そしてi5/OSというIBMのOSをサポートしている。IBMのPOWER6マイクロプロセッサベースのサーバーSytem pとBlade Centerに組み込めば、一つのシステムを160のパーティションに区分けでき、サーバーの使い勝手が格段に良くなるとしている。

DRAMの価格下落は異常であるが、半導体産業の成長は止まらない。シリコンウェーハ世界第2位のSUMCOは、300mmウェーハを増産するため設備投資を1割強上積みし、2010年2月までに従来よりも20万枚増やすことを発表した。追加の投資額は550億円で、SUMCOグループ全体で2010年中に月産200万枚生産するとしている。

分析:津田建二

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