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米国GlobalFoundriesがスタート、ファブライトで活用増えるファウンドリビジネス

ファウンドリビジネスに関して2つの大きなニュースがあった。一つは米AMD社がチップ製造部門を切り離してファウンドリとした独立企業、GlobalFoundries社が正式に設立されたこと。もう一つは米Intel社が初めて外部のファウンドリ(TSMC)を使ってチップを生産すること、である。いわゆる「日本ファウンドリ」は日の目を見ないまま消え去るのか、世界のファウンドリビジネスとの違いを考察してみたい。

GlobalFoundriesは米国に本社を置くファウンドリ企業となる。32nmプロセス開発に力を入れ、来年には製品化にこぎつけるとしている。GlobalFoundries社には、AMDが全株式の34.2%を出資し、残りは中東のアラブ首長国連邦の一つであるアブダビ首長国政府系投資会社、ATIC(Advanced Technology Investment Co.)社が出資する。GlobalFoundriesはAMDのチップ製造需要を満たすだけではなく、第三者の顧客にも製造サービスを提供する。

従来のドイツ・ドレスデンにある300mmウェーハ工場を拡張し、2番目のファブラインとして2009年末までにバルクシリコンのラインを作る予定だ。ドレスデン事業所はモジュール1と2を持つファブ1とネーミングし直し、モジュール1は45nmのSOIを生産することに集中する。モジュール2は32nmのバルクシリコンのデバイスを生産する。

さらに2009年には米ニューヨーク州サラトガ郡にルーサーフォレスト・テクノロジキャンパスに42億ドルを投じて32nmプロセスラインの建設に着手する。この事業所をファブ2と呼ぶ。1400人を雇用し、間接的に5000人以上の雇用につなげる。

もう一つのファウンドリの動きとして、IntelがAtomプロセッサの生産をTSMCに任せる方針を打ち出したが、これまでのノートおよびデスクトップパソコン向けプロセッサに比べ、価格が安いため単価の高い自社ラインで生産するのでは割に合わないと見たのではないかと想像する。Intelがこれまで巨大な投資を出来たのはチップの平均単価が40ドルと他の半導体メーカーを圧倒するような高い単価であったからこそ、それに見合う投資額であった。しかし、Atomの最も低価格仕様品は1000個購入時で20ドルである。大量購入になるとさらに単価は落ちるだろう。これではもはや自社生産できるほどの価値はないと判断したことは想像に難くない。

日刊工業新聞はIntelに続き、ルネサス テクノロジも45nmプロセスを使う携帯電話用のSH-モバイルをTSMCに委託すると報道した。ソニーも先端半導体に続きイメージセンサーも外部のファウンドリに委託するとしている。

製造が得意な日本になぜ純粋なファウンドリビジネスができないのか。もしファウンドリ会社を設立するなら、NECエレクトロニクスやルネサスは、製造部門を切り離しファブレスとしてやっていく覚悟が求められる。ファウンドリ部門と重複させる必要がないからだ。東芝のように常に微細化と設備投資が必要なメモリーを手掛けるメーカーはファウンドリとは無縁だろう。しかし、富士通マイクロエレクトロニクスも富士通から完全独立してファウンドリの道を歩めるのか、まだ態度は明らかになっていない。

細かい仕様要求や仕様変更などを当たり前としている日本の企業にとってファウンドリ企業が存在すれば注文を出しやすいはずだ。しかし、日本では設計や製造を含めて、「技術の流出」という意味不明な言葉に惑わされて、水平分業をこれまで嫌ってきた。世界のオープン化はあくまでも入口と出口、すなわちインターフェース(ハードウェアもソフトウェアも含めて)のオープン化であって、決して中身までオープンにしているわけでは決してない。肝心かなめの技術はどの企業もしっかりIPR(知的財産権)で守っている。

ファウンドリのための資金の増強に関しても、今回のAMDからスピンオフさせたGlobalFoundriesがそのヒントを提供している。すなわちアラブの政府系ファンド資金の利用だ。親会社や日本国内企業だけで資金を調達することを考えていては未来は開けない。

マネージメント系のニュースでもう一つ、スパンシオンの破たんについて触れておきたい。米国本社も米連邦破産法11条の適用を申請したが、全CEOのBertrand Cambou氏が退職金を返上し、破産申請する前にレイオフした社員の退職金にあててほしいと涙ながらに語ったというニュースがSan Jose Mercury Newsに掲載された。3000人の従業員をカットしたときに退職金を与えなかったことを悔やんでいる。米国の経営者は冷たいという日本のメディアはいるが、こういった経営者も米国にいるのである。

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