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金融危機を回避するG7では世界経済の減速を食い止めることで精一杯

世界的な金融危機を回避するための議論を世界の蔵相たちが行うといった、歴史上はじめてのG7会議の1週間だった。1929年の世界大恐慌では、それぞれの国がそれぞれに対応しただけだったために戦争という不幸に走る国が出た。しかし、2008年の大恐慌は世界中の蔵相が集まり、公的資金導入をはじめとする市場の先行き不安をみんなで解消するための知恵を集めて協議した。先週は、半導体・エレクトロニクス産業も急速に市場が冷え込んできたというニュースも多かった。

日本経済新聞の10月9日朝刊によると、携帯電話の出荷が8月は前年同月比でなんと48%も減少したとJEITAは発表した。これは台数ベースだが、買い替え需要が落ち込んだせいらしい。携帯電話通信業者が昨年以降、初期価格を極端に安くするゼロ円携帯を排除し、海外の携帯電話メーカーと歩調を合わせる方式を導入してきた。携帯電話の販売価格が高くなったため、2年契約の割賦販売が多くなり、2年という縛りが強くなり買い替えが減ったということだ。いろいろな高機能を付け、1機5万円となれば売れなくなることは当初から予想されたことであり、これ自体は世界恐慌とは直接関係しないが、市場の後退はメーカーにとってはダブルパンチとなる。携帯電話では好調を維持してきたシャープでさえ、2008年4~6月期の売上は対前年同期比で38%減だという。

携帯電話の売れ行き不振に伴い、NANDフラッシュメモリーの値下がりも顕著になってきた。今年の1月に単価8ドルの16Gビットフラッシュが3月に6ドルに低下、8月には4ドルだったのが、9月には2.5ドルにまで低下した。携帯電話だけではなく携帯音楽プレーヤーやSDカードなども低調だとして、供給過剰感が強まり価格は下落した。

NANDフラッシュに莫大な投資をしてきた東芝は事業の見直し、てこ入れを緊急に行ったという記事も7日に出ている。四日市工場の第1製造棟の生産ラインを来年3月に閉鎖する予定だったが、このほど閉鎖し、ここで運営していた200mmウェーハラインを大分工場へ移管し、大分の150mmラインを早急に200mmに入れ替えを進める。また、個別半導体事業は後工程の海外生産比率を現在の3割から6割までに高めるとしている。

米マイクロンテクノロジー社はメモリーを減産すると同時に2年間で15%の従業員をカットすることを発表している。インテルとの合弁のIMフラッシュテクノロジーズはマイクロンのボイジー工場での生産を中止し、マイクロンのNAND生産量を15%減産することになるとしている。同工場は200mmウェーハでフラッシュを生産していたため、300mmウェーハで生産するよりも収率が悪く生産コストがかかっていた。

一方で、エルピーダメモリは、STマイクロエレクトロニクスとインテルとの合弁であるニューモニクスとファウンドリ契約を締結、NORフラッシュを300mmラインで製造する。回路線幅は45nmを利用するとしている。

こういった携帯電話、NANDフラッシュメモリーの景気後退は、世界の金融恐慌の表れのひとつと見るべきではないかもしれないが、ここしばらくはエレクトロニクス・半導体の見通しは決して楽観的ではない。というのはサブプライムローンに端を発した今回の金融恐慌に対して、「公的資金の注入」という社会主義的な措置を講じることで、行き過ぎた資本主義、金融経済のモラルハザードを食い止めることはできるものの、「成長」ではなく「低下を食い止める」ことにすぎないからである。本来の経済成長は、やはり資本主義的な市場経済がドライブするものだと思う。公的資金の投入は、あくまでも経済減速を食い止めるための措置にすぎない。半導体・エレクトロニクスの先行きが楽観を許さないと述べたのは、世界経済が成長しない時期に入るからである。

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