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半導体/FPD産業に対する世界金融危機の影響、ボディブローのようにじわり

エルピーダが8月に中国江蘇省蘇州市と合弁でDRAMを生産する工場の建設を発表していたが、このほど1年程度先送りすることをエルピーダの坂本社長が発表した。エルピーダは2008年度上期(4~9月)の連結決算において、売上高は2228億円、最終損益が456億円の赤字になった。特に直近の7~9月期の最終損失は318億円となり、四半期ごとに赤字幅は広がっている。先週のニュースは金融危機の影響が出てきたことを示している。

DRAMの市況回復が短期には見込めず、DRAM価格の低落傾向にまだ歯止めがかかっていない。11月7日における1GビットDRAM(667MHz DDR2)の価格は、市況サイトDRAMeXchangeによると平均0.97ドルと採算ラインを大きく下回っている。これではDRAMメーカーはビジネスできない。

FED(電界放射型ディスプレイ)の開発会社であるエフ・イー・テクノロジーズがパイオニアの鹿児島工場を買収するという計画も凍結するというニュースが流れた。これも資金調達が困難になってきたため。

ロームが今年度終了までに1000人削減するというニュースもあった。日本経済新聞では上半期の実績については述べられていないが、2009年3月期には売上3735億円、営業利益285億円という見通しを発表した。これまで常に営業利益率2ケタのロームが1ケタに落ちるのである。

世界金融危機のわれわれの産業に対する影響は、まず資金調達が困難になることだ。次に半導体を使う電子機器市場が冷え込むことである。半導体産業は景気サイクルがあるため景気の底に次への成長の投資をしなければならないのだが、投資するための資金を調達できないということが今回の金融危機の最大の問題。日本だけではない。台湾メーカーも投資を絞っている。

電子機器市場の冷え込みは、サブプライムローンの影響により米国の消費者のサイフのひもがきつくなったことによる。これまで大量に消費してきた米国国民がモノを買わなくなった影響はじわじわ出ている。米国がこれまで最大限に購入していた中国製品が売れなくなり、中国のGDPの成長率は半分の一ケタに落ちる見通しだ。先週、欧州の高級車BMWの売り上げが落ちてきたという発表も、大きな消費国である米国での落ち込みが効いてきたからだ。

欧州は米国ほど何でも大量には消費しないため、欧州での消費市場にはさほど期待はできない。マネーゲームの余波は米国から欧州にも流れ、ユーロ安、ポンド安を呼んだ。日本だけが今、経済的に最も安定な国であると、世界中が見ているからこそ、円高になっている。銀行は確かに不良債権処理を無理やりにでも小泉政権(竹中平蔵財相)が実行したおかげで、日本の金融が比較的安定しているのである。もし公的資金の注入しかやっていなければ日本の金融は欧米と一緒に沈んでいただろう。

とはいえ、米国や日本の消費者市場の冷え込み、資金調達の困難などがジワリと効いてきている。次の景気回復が今は全く見えない状態であるが、これが先行きを一層悪くしている。2008年当初に言われた、今年後半には景気が上向く、という予測は見事に外れた。いつ頃回復するのかは誰にもわからない。

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