半導体決算、悲喜こもごもだが、TSMCはすでにA14の詳細を発表
2025年第1四半期(1月〜3月期)のIntelとSK Hynixの決算発表は対照的だった。Intelの売上額が前年同期比(YoY)横ばいの126.7億ドルに対して、SK Hynixのそれは同42%増の17兆6400億ウォン(約123.5億ドル)と飛躍した。ルネサスの決算では底が見えたが、アドバンテストは同60.3%増の7797億円(24年度)となった。TSMCは技術会議で、A14プロセスを28年に量産すると発表、日本ではラピダス支援に向けた法改正が成立した。
図1 Intelの決算発表 CEOのLip-Bu Tan氏(左)とCFOのDavid Zinsner氏(右) 出典:Intel
Intelの決算発表では、売上額はYoYでほぼ横ばい(0.5%減)だが、営業損益は前年同期の10.69億ドルの赤字から3.01億ドルの赤字に減少した。しかし、エクイティ投資や関連する税などで純損益は前年同期の3.81億ドルから8.21億ドルへと赤字幅が拡大した。本業での売上が伸びないことが最大の不調の原因。各部門の売り上げはパソコン向けのクライアントコンピューティング部門はYoY8%減の76億ドル、データセンター部門は同8%増の41億ドル、ファウンドリ部門は47億ドル。しかし、製品部門は黒字だが、ファウンドリ部門が23.2億ドルの大赤字という構造は1年前と変わっていない。
これに対してHBM(High Bandwidth Memory)技術を持つSK Hynixでは、これまで全く届かなかったIntelとほぼ並んだ。営業利益はYoYで158%増の7兆4400億ウォン(約52.1億ドル)と絶好調だ。営業利益率は42%に達した。売上額は前期(2024年10〜12月期)の19兆7670億ウォンと比べると少しダウンしているが、これはあくまでも季節要因にすぎない。HBMを含めたDRAMの売り上げは80%、NANDフラッシュは18%である。
DRAMの内のほぼ50%がHBMであり、Hynixの特長といえる。
そのHBMに関してHynixは2025年の見通しを示し、2025年はほぼ2倍に成長すると見ている。同社がリードするHBM3E規格の12枚積層する製品HBM3E 12Hiは予定通り量産拡大中であり、今年中に8枚積層のHBM3E 8Hiとビット販売でクロスするという。また、次世代製品であるHBM4 12Hiは3月にサンプル出荷中であり、ユーザーの要求次第だが、今年中に量産に向けた準備を整えている。
ルネサスの第1四半期売上はYoYで12.2%減の3088億円、営業利益率は27.1%とYoYで5%ポイントを落とした。ただし、前期(2024年10〜12月)と比べ売り上げはQoQで5.5%増、営業利益率も1.4%ポイント増となっている。産業・インフラ・IoT事業がやっと底を脱出できるかどうかというところで、YoYでは12.1%減だが、QoQで7.1%増、自動車事業もYoYは12.8%減だがQoQは4.4%増となってきた。工場稼働率も4Qに比べ上向いている。ただし、2Q見通しは横ばいと見ている。
アドバンテストの決算では、売上額がYoYで96.6%増の2323億円、営業利益率27.6%と好調の業績だった。半導体テスターの売り上げが大きく寄与し、特にロジックのSoCテスターが1488億円、メモリテスターが351億円となった。地域別では台湾が最も大きく1331億円。中国向けの比率は19%に留まっており、他の製造装置メーカーよりはかなり少ない。ただし、海外売上比率は98.9%と極めて高い。
TSMCは、4月23日北米でTSMC Technology Symposiumを開催、プロセスノードA14技術について初めて明らかにした。今年後半に量産に入るN2プロセス(2nm相当の技術)と比べ、A14は動作速度が最大15% 、N2と同じ速度なら消費電力は最大30%削減され、ロジック集積度は20%以上になるという。これはナノシートトランジスタの最適化に加え、NanoFlexスタンダードセルアーキテクチャをさらに進化させたNanoFlex Proによるものだとしている。A14の量産時期は28年を予定している。
日本でも大きな動きがあった。政府がラピダスを念頭に半導体企業を支援するための情報処理促進法などの改正法が25日の参議院本会議で可決成立した(26日の日本経済新聞による)。この法律によって、政府が出資や融資の債務保証をできるようになる。これまでは補助金であり、融資や出資ではなかった。これからは民間企業や金融機関が融資や出資する場合の債務保証を国が肩代わりできるようになる。経済産業省傘下の情報処理推進機構(IPA)が金融業務を行う。ラピダスを想定して出資金1000億円を同省が確保している。


