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TSMCの10月売上額が過去最高の約1.4兆円に、AIチップ関係伸びる

台湾TSMCは10月売上額が前年同月比29.2%増で過去最高の3142億台湾元だったと発表した。韓国SK HynixはHBMでさらにSamsungをはじめとするメモリメーカーに差をつける構えだ。いずれもAI向けチップで成長している。Qualcommは2024年7〜9月期の決算発表でAIシフトを鮮明にした。AI特需を狙いキオクシアの北上工場新棟が運用開始した。ベルギーのimecは東京と北海道に拠点を置くことを決めた。

TSMC売上額の推移(単位百万台湾元)

図1 TSMCの月次売上額の推移 単位は100万台湾元


TSMCの10月売上額3142.4億台湾元(約1兆4900億円)は、これまで過去最高だった24年7月の2569億台湾元を大きく上回った(図1)。TSMCの10月業績はAppleのiPhone 16やNvidiaのAIチップにけん引された格好だ。11月、12月は従来のクリスマス商戦が始まるため、第4四半期は過去最高の売上額が予想される。TSMCは決して売上指向ではなく、利益を十分とる会社であり、7〜9月期の第3四半期には7596.9億台湾元の47.5%が営業利益として計上されている。

11月6日の日本経済新聞は、韓国財閥大手SKグループは4日、AI(人工知能)に特化した経営戦略の説明会を初めて開いた、と報じた。グループの内、半導体のSK Hynixは生成AI向けのDRAMメモリの一種であるHBM(High Bandwidth Memory)で80%以上の圧倒的な市場シェアを握っている。この説明会で、次世代のHBM4は計画通り2025年後半の量産準備ができたという。このHBMをSK hynixはNvidiaに供給し、それをNvidiaのGPUチップであるBlackwellと一緒に実装してB200製品とする。このAI製品をTSMCが実際にパッケージに組み立てている。SK hynixとNvidiaとの関係から、この説明会ではNvidiaのCEOであるJensen Huang氏がビデオメッセージを寄せている。

中国のファウンドリトップのSMICも業績が良い。7日に24年7〜9月期の決算では売上額は前年同期比34%増の21億米ドルで純利益が1億4880万ドルだった、と9日の日経が報じた。ただし、純利益率は売上額の7%しかない。売上額全体の86%が中国向けで米国向けは11%だという。前年同期は中国向け84%、米国向け13%だったため、国内志向が強まっている。

QualcommもNvidiaやSK hynixと同様、AI志向だが、この両社とは違いスマートフォンやパソコンなどのエッジAIでの地位を確立しようとしている。Qualcommが発表した24年7〜9月期(2024年度第4四半期)の決算では、売上高が前年同期比19%増の102億4400万ドル(約1兆5800億円)、純利益が96%増の29億2000万ドルだった。純利益率は28.5%と堅調だ。売上額102億ドルの内、ファブレス半導体としての部門は87億ドル、特許部門が15億ドルとなっている。市場別では携帯機器向けが61億ドル、IoT向けが17億ドル、自動車向けが8.99億ドルとなっているが、それぞれ前年同期比が12%増、22%増、68%増となっている。

最近MicrosoftのAIパソコン仕様であるCockpit Plus向けのSoCであるSnapdragon X Plusの8コアチップはIoT部門に入っており、Dell、HP、Lenovo、Samsung、Acer、ASUSのパソコンに採用されている。これまでSnapdragon Xシリーズは58機種に採用されたとしている。Qualcommは次の四半期売上額は105〜113億ドルと見込んでいる。Qualcommの年度決算期は10月から翌年の9月までであり、今期の年間売上額は前年度比9%増の389億ドルとなっている。ただし、今後の問題としてArmとの対立がある。Qualcommが買収した企業がArmとのライセンス契約をしており、その扱いについて見解が分かれている。


キオクシアが北上工場第2製造棟と管理棟の運用を11月11日から開始することを5日に発表した。第2製造棟の稼働は25年秋を見込んでいる。この新棟は稼働を当初の23年末から延期してきた。NANDフラッシュメモリの需要低迷が長く続いたためで、23年末までには建物の外観は完成していたものの、製造装置の納入を停止していた、と6日の日経が報じている。


ラピダスが技術提携しているベルギーの半導体研究所imecが、東京とラピダスのある北海道に拠点を設けると6日の日経が伝えた。またラピダスが参加するLSTC(最先端半導体技術センター)は、優れた半導体人材を育成するための新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募事業に採択されたと発表した。5年間で75億円の補助を受ける。5年間で200名をTenstorrentに派遣して研修させるとしている。

(2024/11/11)
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