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メモリビジネスは好調に、産業向け非メモリはまだ不調続く

メモリビジネスは好調、産業向け非メモリビジネスはまだ不調。このようなビジネス状況が浮かび上がった。2024年第2四半期(4〜6月期)におけるメモリの韓国SK hynixの売上額は、前年同期比(YoY)2.25倍の16兆4230億ウォン(1ウォン=0.11円)と好調だったのに対して、マイコンとSoC、アナログのルネサスエレクトロニクスの売上額は同2.7%減の3588億円となった。

左:2Q24 Income Statement、右:Profitability / SK hynix

図1 メモリは回復傾向が明確 出典:SK hynix


先週、SK Hynixが発表した売上額は前四半期比(QoQ)で32%増となり、この所ずっと右肩上がりで推移している(図1)。2022年後半から続いてきたメモリ不況は、それ以前の作りすぎに対する反動による在庫調整に追われてきた。それでもSK hynixは、AIチップと一緒に使われる HBM(High Bandwidth Memory)がNvidiaのGPUと共に需要が旺盛になり、他のメモリメーカーとは違い一足先の2023年第4四半期に営業損益で黒字転換を果たした。

24年第2四半期(2Q)での売上額に対する粗利益率は46%、営業利益率は33%の5兆4690億ウォンと回復を示した。売上額の97%がDRAMとNANDフラッシュというメモリメーカーのSK Hynixは、売り上げの66%がDRAMビジネス、31%がNANDビジネスである。DRAMメモリで伸ばした分野はサーバー向けで、NANDフラッシュはSSD(Solid-State Disk)が大きく伸びた。パソコンやモバイル向けはさほど伸びていない。

好調なDRAMビジネスでは、大容量化を示すビット成長はQoQでは20%台の低い方で、平均単価(ASP)は同10%台半ばだという。一方NANDはビット成長率が同一桁%台の低い方で、ASPは10%台の高い方だとしている。

第3四半期(3Q)の見通しでは、DRAMのビット成長はQoQで一桁%台だが、HBM製品の数量が増えていくとし、NANDのビット需要はQoQベースで一桁%中半の減少になるとみている。ユーザーの在庫調整が出てきていると同時に需要がまだ軟調だが、eSSDは増加するという。NANDの売り上げ全体としては、製品ミックスの最適化とASPの増加でQoQは増え続けるとしている。

24年後半に対しては、生成AIの進化が進み、GAFAMなど大手インターネットサービス業者からのAIサーバー需要が相変わらず旺盛で、従来のパソコンやスマートフォン需要もAI機能搭載により徐々に立ち上がってくると見ている。


一方、ルネサスは、売上額が若干下がったものの、営業利益率としては30.8%をキープしている。同社の柴田英利CEOは、決算発表で開口一番、「予想が甘すぎた。産業向け半導体の底が意外と続き、第3四半期もチャネル在庫の調整を進める」とネガティブな見方を述べた。

しかし、これまでのメモリビジネスと比べればやや落ちてきている程度に過ぎない。YoYでは2.7%減だがQoQでは2.0%増である。産業・インフラ・IoT向け事業では、YoYで18.9%減、QoQでも3.1%減の1662億円だが、自動車向けは前年同期比18.2%増、QoQでも6.9%増と着実に増加している。これまでは産業向けが売り上げの多くを示してきており、例えば2022年3Qでは自動車向け1578億円に対して、産業・インフラ・IoT向けが2268億円だったが、産業向けが徐々に落ちてきており、24年2Qには1662億円まで低下した。しかし自動車向けは1578億円から1904億円へと増加してきている。

産業向け半導体製品は3Qに向け稼働率を減らし見通しも下げている。産業向け製品の中では、工場やFA関係と、基地局、データセンター、インフラに分けると、基地局は見通し通り、データセンターやインフラ向けは他社のICチップの遅れの影響を受けたという。悪かったのはFAや工場関係の機器向けだ。中国は堅調だが、日本が弱含みだとしている。産業向けは3Qも底が続き、4Q も当初は上がると思っていたが厳しいと見る目に変わったという。AIデータセンター向けにはタイミング製品やマイコンよりも、パワーマネジメント関係が追い風になりそうだと見る。

海外売上比率が80%弱のルネサスの弱点は日本市場のようだ。日本の売り上げは20%強あるが、日本の需要は弱いと柴田氏は語る。

また産業向けビジネスを展開しているSTMicroelectronicsやTexas Instrumentsなども24年3Qにおける業績は悪い。YoYでの売上額は、それぞれ25.3%減の32.3億ドル、16%減の38.2億ドルとなっており、ルネサスはむしろましな方かもしれない。近々Infineonやonsemiなども決算発表予定で、それを見ればもっと明確になるだろう。

(2024/07/29)
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