テキサス州が半導体産業に14億ドル補助、メモリはHBM競争に
米国のテキサス州が半導体産業に14億ドル(約2300億円)を補助すると7月6日の日本経済新聞が報じた。Samsung電子は2024年4~6月期の営業利益が10兆4000億ウォン(約1兆2100億円)だったと発表した。メモリ市況は回復しつつあり、SK Hynixは2028年までの5年間に12兆円を投資すると発表、キオクシアも新技術開発により2Tビット品をサンプル出荷した。
テキサス州のグレッグ・アボット知事が7月6日から台湾、韓国、日本を歴訪しているが、目的は起業誘致であり、同盟国の企業を自国に呼び寄せて、半導体のサプライチェーンを強化する狙いだ。テキサス州オースチンには米国内の半導体工場は複数あり、海外勢では韓国のSamsungがすでにファウンドリ工場を稼働させて10年以上経つ。Samsungはオースチンから25kmほど離れたテイラー市にも170億ドルをかけてファウンドリの新工場を設立することを2021年に発表している。
このところSamsungはAIチップとセットで使われるHBM(High Bandwidth Memory)メモリでSK hynixにリードされており、その巻き返しを狙って営業利益が増えたことを強調した。6日の日経が報じたものだが、海外メディアも報じており正式に発表したようだ。ただ、Samsungの4~6月期決算報告は7月31日に予定されており、今回の発表では売上額、粗利益などの基本的な数字が発表されず、営業利益が前年同期比16倍に増えたと発表しただけにとどまった。正式の決算発表前にリークすることは法的に許されないが、さまざまなメディアに一部発表したことは、許容範囲内かもしれない。
Samsungメモリのシェアはトップではあるが、HBMビジネスで出遅れたために、焦っているように映る。HBMでトップのSK Hynixに負けているだけではなく、Samsungと同じ程度に出遅れていたMicronの最新のHBM(HBM3E仕様)は、Nvidiaに採用されすでに出荷が始まったという報道もある。SamsungのHBMはNvidiaの認定テストで不合格になったと伝えられており、SamsungはHBMで完全に出遅れた。おそらくそのために、今回の発表になったのであろう。利益が増えたことを強調するがDRAMの、単価も上がってきたため、日経は、アナリストのコメントを引用し、HBMの寄与よりも汎用メモリの値上がりが営業利益の増加に影響した、と報じている。
メモリが回復し単価も値上がりしてきたことで半導体メモリ各社の株も上がっている、と3日の日経が伝えた。SK hynixの株価は2023年末比で66%、Micronは54%上昇した。メモリはスマートフォンとパソコンが大量に消費するが、その成長率は鈍化しており大きな成長は見込めない。このため株価では将来性が反映されるため、これから成長してゆくAIと一緒に使われるHBMがデータセンター向けに強く要望されている。
SK Hynixは、28年までに総額103兆ウォン(約12兆円)を投入すると発表した。103兆ウォンには4月に発表した韓国清州市の半導体工場への20兆ウォンも含まれているが、総額103兆ウォンの内、8割をHBMなど先端品の研究開発や量産に投じるとしている。
メモリ市況の回復で、キオクシアも2024年1〜3月期に黒字化させた今、積極的に攻めていく。まず2T (1T=1024G) ビットのNANDフラッシュメモリをサンプル出荷した。DRAMメモリアレイウェーハとCMOS周辺回路ウェーハを張り合わせる「CBA(CMOS directly Bonded to Array)」技術を使い、垂直・水平方向のスケーリングでビット容量の向上と3.6Gbpsの高速インターフェイスを実現した。メモリセル部分は4ビット/セル方式を採用、これもビット容量向上に役立つ。
キオクシアはこのチップを1パッケージ内に16枚積層することで4TBのNANDフラッシュができるとしている。この場合でもパッケージサイズは11.5mm×13.5mm×1.5mm(高さ)ですむという。ストレージシステムのPure Storage社は、2Tビット製品を導入する。
図1 屋上にソーラーパネルを設置したキオクシア四日市工場第5製造棟
キオクシアは、四日市工場第5製造棟に自家消費型太陽光発電システムを導入し、7月1日より稼働を開始したと発表した。これは、第6製造棟に続き、四日市工場で2棟目の導入事例となる。今回導入する太陽光発電システムの発電設備能力は約3.4MW、年間発電見込量は約3,800MWhで、これにより、四日市工場全体でのCO2削減効果は約3,700トン/年となる見通しである。