Micronの最新決算報告からメモリ市場の回復状況を知る
先週、Micron Technologyの2024年度第3四半期(2024年3〜5月)の決算が発表された。これによると売上額は徐々に増加し始めており、営業利益は2期連続プラスで、しかも増加傾向だった。メモリが回復している様子を知ることができる。生成AIへの規制の検討が始まった。医療データをAIで解析する企業をソフトバンクグループ(SBG)が設立する。

図1 Micron Technologyの収益推移 出典:Micron Technologyの決算発表をセミコンポータルがまとめた
2024年3〜4月期におけるMicronの売上額は68.1億ドル(1兆円強)。前年同期比82%増、前四半期比17%増という回復ぶりだ。1年前と比べると、コンピュータ&ネットワーキング部門が85%増、モバイル部門は94%増、組み込み部門は42%増、ストレージ部門は116%増となっており、全ての部門での回復傾向が出ている。需給状況が緩和され、単価の値上がりも進み、利益がようやく2期連続増え続くようになった。
半導体市場は、AI需要が強く、特にデータセンター市場では前四半期比で50%以上の伸びとなっており、AI関連のHBM(High Bandwidth Memory)や高集積のDIMM(Dual In-line Memory Module)、データセンター向けSSDなどが好調だとしている。Micronの売上額の69%がDRAMであり、その出荷ビット数は前四半期比では若干減少しているが、売上額の30%を占めるNANDフラッシュは一桁%の後半(6~9%)で伸びていると表現している。単価はDRAM、NANDとも前四半期比20%値上がりしており、収支の改善が進んでいる。
次の四半期の見通しでも回復は着々と進むようだ。売上額は76億ドル±2億ドル、粗利益率は34.5%±1.0%、営業利益は10.6億ドル±1500万ドルと見ている。
先週、アドバンテストの2027年3月期までの新中期計画の発表があり、ここでも生成AI向けの半導体を中心に検査装置の需要が拡大すると見ている。半導体検査装置やその周辺装置の市場は、24〜26年平均で92億ドルに成長するとアドバンテストは想定している。
生成AIは半導体市場を成長させるけん引力となっているが、6月29日の日本経済新聞は、「米司法省はNvidiaの半導体取引、米連邦取引委員会(FTC)はMicrosoftのM&A(合併・買収)戦略について、調査を始める。市場支配力を強める一部の企業が不当に競争をゆがめていないか分析を急ぐ」と報じた。Nvidiaは生成AI市場で8割のシェアを握ると見られており、囲い込みを進めている可能性を調べるという。NvidiaはGPUなどの半導体チップだけではなく、並列処理をプログラムしやすくするためのソフトウエアCUDAも提供している。さらにAIのモデルやライブラリなどフレームワーク(PyTorchやTensorFlowなど)も揃えているが、これらはNvidia固有のものではない。FTCが調査するのは独占禁止法に触れているかどうかという点であり、生成AIそのものを規制するものではない。
同様にEU(欧州連合)の欧州委員会(EC)はMicrosoftとOpenAIとの提携関係について調べる、と29日の日経が報じた。これも独占禁止法違反の疑いで調査を検討しているという。
金融ファンドであるSBGは、米医療解析サービスのTempus AIと共同で8月1日に両社折半の新会社を設立すると発表した。資本金は300億円。医療データをAIで解析するサービスを提供する。Tempusは2015年設立のスタートアップで、病院が持つさまざまな生体データや電子カルテを収集してAIで解析する。SBGは国内でも大学関係の医療機関と協力し、データを匿名化しながら統一的なデータベースを作り、病院に無償で提供するという。