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TSMC、1.6nm相当のプロセス技術A16を公開

TSMCは2024Technology Symposiumをカリフォルニア州サンタクララで開催、2nmの次の1.6nmに相当する技術を発表した。先週、2024年第1四半期(1Q)における各社の決算が発表された。Intel、SK hynix、ルネサスエレクトロニクス、ソシオネクストなどが決算を発表。生成AI向けの学習ソフトを軽くするという動きもあり、AIプロセッサを集積するSoCへの期待が膨らむ。

図1 TSMCの日本における現在のプレゼンス 横浜・大阪のデザインセンター、つくばの3D-IC R&Dセンター、熊本のJASMに拠点

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TSMCの2024 Technology Symposiumが始まった。この始まったと表現したのは、世界各地でこれから順次開催していくからだ。こういったイベントはロードショーと言われている。米国はオースチン、ボストンと3カ所回ったのち、欧州、台湾、中国、イスラエルと回り、最後の6月28日に日本で開催する予定となっている。今回、1.6nmプロセスノードに相当するA16プロセス技術を開発、2nmプロセスに相当するN2の次という位置づけで、2026年に量産開始するという計画だ。Aはオングストロームから来た単位である。TSMCではN3Eプロセスを量産しており、N2プロセスは25年の後半に量産する予定となっている。

A16プロセスは、ナノシートを利用するGAA(ゲートオールアラウンド)トランジスタ技術と、裏面電源配線技術であるSuper Power Rail技術を使う次世代技術である。N2Pプロセスでの同じドレイン電圧条件と比べて性能(動作速度)が8~10%改善し、同一速度なら15~20%消費電力が減少するとしている。集積度も10%向上する。

TSMCはモノリシックな集積度向上だけではなく、先端パッケージを利用する集積度向上も進めており、InFO(Integrated Fan-Out)やCoWoS(Chip on Wafer on Substrate)に続き、System on Wafer(SoW)技術についても開発中であることを述べている。CoWoS技術ではAIチップなどのプロセッサとHBM(High Bandwidth Memory)を基板上に並べて配置する2.5D技術であるが、3Dスタックを利用するSoIC(System on Integrated Chips)技術も確立したという。SoICと他の部品も同一基板上に搭載する究極のSiP(System in Package)技術をユーザーは使えることができるとしている。ウェーハ上にSoICやHBMなどを集積するSoW技術は、コンピューティング能力をこれまで以上に上げる技術であり、特にデータセンター内のコンピュータラックに匹敵するコンピューティング能力を持つと見ている。狙いはもちろん高集積のAIコンピュータだ。


Intelが2024年1Qの売上額が前年同期比9%増の127億ドルになったと発表した。Non-GAAP(非会計原則)での売上額に対する粗利益率は45.1%、営業利益率は5.7%と黒字で、純利益も8億ドルの黒字となった。前年同期は赤字。CPUやSoCなどの製品グループの売上額は前年同期比17%増の119億ドルだが、Intel Foundryのそれは同10%減の44億ドル、AlteraやMobileyeなどのその他部門7.75億ドル、各セグメント間の重複を除き、合計の売上額が127億ドルとなっている。

製品グループは33億ドルの営業黒字だが、ファウンドリ部門は25億ドルの営業赤字となっている。EUVの導入により市場までのウェーハ処理期間が短縮してスピードが3倍に上がるため、今後ASP(平均単価)は上がると期待している。Intel 18Aプロセスの6番目の顧客に対してPDK 1.0(プロセス開発キット1.0)を2Qに提供し25年前半に量産開始する計画となっている。


SK Hynixの1Qでの売上額は前年同期比144%増で前期比でも10%増の12.43兆ウォン(1ウォン=0.11円)となり営業利益も2.89兆ウォン、純利益1.92兆ウォンとなり赤字から脱出した。ルネサスの1Q売上額は前年同期比2.2%減となったが3518億円とし、営業利益率は32.3%を確保した。前年同期と比べ、日本と中国の売上がそれぞれ170億円、50億円のマイナス、欧州も20億円のマイナスだが、北米とアジアがプラスだったため相殺して2.2%のマイナスとなった。ソシオネクストの1Q(2023年度4Qとなる24年1〜3月期)売上額は前年同期比4.3%減の516億円、営業利益率14.7%で、純利益は58億円の黒字となった。2023年度全体の売上額は前年度比14.8%増の2212億円となり、営業利益率も16.1%を確保した。


生成AIは用途別に応じた製品が発表された。MicrosoftはOpenAIに出資しているが、彼らのGPTシリーズとは別にもっと軽い「Phi-3」を開発した。スマートフォンのSoCプロセッサに集積したAI専用プロセッサ内で動かせるように、学習パラメータ数は38億、70億、140億の3種類を用意した。チャットGPTのGPT-3は1750億パラメータと巨大。また、Metaは新しい大規模言語モデル「Llama3」を発表し、80億と800億パラメータの2つのモデルを提供する。

(2024/04/30)
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