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驚きの67%という営業利益率のNvidiaと、ファウンドリに賭けるIntel

先週は半導体にとって大きな出来事が3件起きた。一つは、Nvidiaの2024年度第4四半期(2023年11月〜24年1月期)の決算発表があり、Intelを抜いて世界半導体のトップに躍り出たこと、二つ目はIntelがイベントを開催、AI時代のシステムファウンドリになると宣言したこと、三つ目はTSMCが熊本県菊陽町に建設を終えたJASM(Fab23)が完成し、開所式を行ったことだ。

Nvidiaの決算期はカレンダーイヤーではない。2月〜翌年1月である。同社は会計年度の最終四半期(23年11月~24年1月末)売上額が200億ドル±2%になると前四半期に予想していたが、これを大きく上まわり221億ドルとなった。2024年度では609億ドルとなり、これまでトップのIntelの2023年度(1〜12月)売上額542億ドルを大きく上回った。ただし、2023年の半導体企業のトップかどうかという意味ではまだ微妙である。2023年1月の売上額は極めて小さかったからだ。近いうちに推定見積額を報告するが、2月〜1月のこの決算額は急速に単価が上昇した結果である。

Nvidiaの売上額は前年同期比265%増、すなわち3.65倍、前四半期比22%増という結果だった。最大の貢献は、生成AI向けのGPU(グラフィックプロセッサ)への需要の高まりによる単価の値上がりと見られる。というのは利益を見ればわかるからだ。売上額から原価を引いた粗利益率は、GAAP(一般に公正妥当と認められた会計原則)では76%、さらに販売費と一般管理費を引いた営業利益率は66.7%の147億4900万ドル、と極めて好調。ただし、通常、健全な財務と言われる企業の営業利益率は30~40%程度が多く、それ以上となるのは単価の値上がりによるところが多い。ちなみにその他の損益は、受取利息や配当金などの雑収支を計上したもので、本業の利益を示す数字は営業利益といってよいだろう。

Nvidiaの収入を押し上げた生成AIは主にデータセンターに納入されるため、データセンター向け売上額は全社売り上げの83%に相当する184億ドルとなっている。前年同期比で409%増すなわち5.09倍にも上る。ゲーム機向けの売上額は29億ドルと年度でも104億ドル程度で、もはやデータセンター向けGPUの需要がけん引しているといえる。

Nvidiaの1年分の2024年度決算では、前年度比126%増、すなわち2.26倍の609億ドルとなったが、GAAPでの営業利益は371.34億ドルとなりその営業利益率は61%にも上る。いわば儲けすぎ状態である。この「生成AIバブル」は次の四半期も続き、2024年度第1四半期(2〜4月期)の売り上げ見込みは今期よりもさらに高い240億ドル±2%と見ている。


Pat Gelsinger CEO / Intel

図1 Intelが量産提供ないし準備間近の5つのプロセスに対応する5つのウェーハとCEOのPat Gelsinger氏 出典:Intel


今回、Nvidiaに抜かれたIntelは、ファウンドリサービスに力を入れることを宣言するIntel Foundry Direct Connect 2024をNvidiaの発表と同じ21日に開催した。ここでは、4年間でIntel 7、5、3、20A、18Aという5つのプロセスノードを揃えたことを訴求し各ウェーハを見せた(図1)。Intel 7と5は量産中、Intel 3は量産準備完了、2nmプロセスのIntel 20Aは2024年に出荷、Intel 18A(1.8nmプロセス)をスケジュール通りに提供するとしている。IntelはUMCとも提携し12nmと16nmのコモディティプロセスも提供する。

図1の手に持っているチップは次世代の「Clearwater Forest」と呼ぶテストチップであり、Intel 18Aプロセスで試作し、テープアウトしたもの。ここでは、これまで同社が発表してきたあらゆる技術を導入したとPat Gelsinger CEOは語っている。すなわち、電源層だけを別ウェーハで製造しCMOS回路ウェーハに張り付けるPower Via、GAA(ゲートオールアラウンド)といえるRibbon FET、チップ同士をブリッジで接続するためのEMIB技術、3D-ICのFeveros Direct技術、Cu-Cu配線接続技術などの先端パッケージ技術だ。Intel 3チップをベースダイとして用い最先端のInte 18Aダイも搭載している。

Intelは自らのファウンドリビジネスの特長を、「システムファウンドリ」と呼んでおり、今回の基調講演では「AI時代のシステムファウンドリ」というタイトルを付けている。システムソリューションを提供するためのファウンドリと位置付けている。このためのパートナー作りにも熱心で、EDA、IP、Design Service、Cloud、さらにUSMAG(国防や航空宇宙、国家安全保障向けのアライアンス)という5つのアライアンスを結成している。 CPUコアとしてArmとも提携、RISC-Vコアにも対応する。2030年までに世界第2位のファウンドリを目指す。


TSMCが熊本工場Fab23の開所式を行った。開所式にはTSMCの創業者であるMorris Chang氏も出席し、「半導体製造の日本におけるルネサンス(再興)の始まりと信じている」と述べた。4760億円を経済産業省が支援している。さらに第2工場にも7320億円を援助する。第2工場は6nmプロセスを導入するというが、プロセスを提供する2027年末にはコモディティとなっており、その投資額に疑問を寄せる業界人は少なくない。

(2024/02/26)
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