Semiconductor Portal

» セミコンポータルによる分析 » 週間ニュース分析

半導体は、攻める時期に来た

再び設備投資、研究投資が活発になってきた。キオクシアがWestern Digitalと共同で運営するフラッシュメモリ工場の設備投資に7290億円を投じると発表した。福岡県でも半導体研究に2億8300万円を予算化し、レゾナックは半導体・電子材料に注力することを宣言した。日本政策投資銀行も1500億円を集中投資する。ソニーの2023年10〜12月期決算が報告され、半導体部門は21%成長を示した。

キオクシア四日市工場 / キオクシア

図1 キオクシア四日市工場 出典:キオクシア


キオクシアの総額7290億円投資を報じたのは2月16日の日経産業新聞。投資期間は2029年4月までで、経済産業省が最大2429億円を補助するという。キオクシアは、2月6日に「特定半導体生産施設整備等計画」に認定されたが、ここでの四日市工場と北上工場における設備投資などに助成金が交付される。助成交付金は最大1500億円だが、2022年7月に認定を受けた「特定半導体生産施設整備等計画に基づく助成金は最大929億円なので、合計で2429億円となる。

また、キオクシアは、LTSC(最先端半導体技術センター)がNEDOに提案した「Beyond 2nm及び短TAT半導体製造に向けた技術開発」が採択されたことを受け、この技術の再委託先として参加すると2月9日に発表している。ここでは、短TAT・クリーンプロセス装置技術を開発する予定となっている。

福岡県にある三次元半導体研究センターの機能強化などのため、「福岡県グリーンデバイス開発生産拠点推進費」として2億8300万円を充てる、2024年度当初予算案を発表したと2月16日の日刊工業新聞が報じた。微細な配線が形成できる露光装置など半導体の試作や評価解析に用いる機器を同センターに導入するとしている。


レゾナックは14日に決算発表を行ったが、その席上、全社の連結売上高のうち半導体・電子材料事業が占める比率を、23年12月期の約26%から30年に45%以上に高める方針も示した。ただ、直近では半導体市況が悪かったため、2023年の半導体・電子材料部門は21%減の3381億円の売上額に留まり、営業損益も94億円の赤字になったものの、半導体は成長産業であるという認識を代表取締役社長兼CEOの高橋秀仁氏は持っている。

このため半導体・電子材料分野では攻めの姿勢を忘れない。シリコンバレーに半導体後工程R&D拠点を新設する。シリコンバレーを拠点に選んだ理由を高橋社長はGAFA(Google、Amazon、旧FacebookのMeta、Apple)が半導体に参入しているからだと述べており、ここに拠点を置くことでPoC(実証実験)から同社も入っていくと積極姿勢を見せている。さらにテキサス州の先端半導体パッケージングのコンソーシアムTIE「Texas Institute for Electronics」に戦略パートナーとして参加した。このコンソーシアムから招待を受け、渡りに船とばかりに「このコンソーシアムは参加費を払って入る価値のある組織だ」と評価している。AMDとIntel、Applied Materials、Micron Technologyも参加している。


12日の日経は、日本政策投資銀行が2024年度から2年間で、国内の半導体や蓄電池などのサプライチェーン(供給網)強化に1500億円以上を集中投資する、と報じた。具体的には、政府による出資を組み込んだ枠組みを使って「サプライチェーン強靱(きょうじん)化・インフラ高度化ファンド」という投資枠をつくるという。

ソニーグループは14日、2023年10〜12月期(2023年度第3四半期)における決算報告を行い、グループ全体で前年同期比22%増の3兆7475億円の売り上げを計上した、と発表した。金融分野とゲーム分野、イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)、音楽、映画分野が好調だったと述べている。

そのうち、半導体部門であるI&SSの売上額は、前年同期比21.1%成長の5052億円と好調だった。4月〜12月の累計では同14,3%増の1兆2042億円となり、その営業利益率は13.2%とまずまずの数字を上げた。前半はスマートフォン、パソコンの不振が響いて累計での成長率は10〜12月期よりも下がったものの、好調な業績と言えそうだ。2023年度の売上額は、前年度比13%成長の1兆5900億円を見込んでいる。

ソニーのイメージセンサはAppleのiPhoneをはじめとして多眼スマホがハイエンドからローエンドまで広がってきたことや、タブレットやPCにもカメラの採用が拡大してきたことが奏功したようだ。

(2024/02/19)
ご意見・ご感想